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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 「口中状態検査器」。これは口にくわえると細菌の有無や虫歯などを調べ、イヤリング状のスピーカーが結果を報告してくれる。「毛髪状態検査器」は手にはめ、頭をなでつけるだけで状態が分かる。「自動ブラシかけ器」「ネクタイ選び器」「忘れ物検査器」は名前から使い方が想像できるだろう

▼いずれも、星新一さんのショートショート『装置の時代』に登場する未来の道具である。一九六〇年代後半の作品。イヤリング状のスピーカーなど今の時代に近い「予言」もある

▼作品の中で星さんはもう一つ予言している。こうした便利な機械は壊れやすく、人々はその修理に追われて苦労するだろうということ。主人公エヌ氏は嘆く。「こんなことになろうとは、むかしの人は考えもしなかったろう」

▼エヌ氏の言葉がふとよぎる事故である。横浜市磯子区の新交通システム「金沢シーサイドライン」の新杉田駅で無人車両が逆走し、車止めに衝突。大勢の乗客がけがをした。機械で制御された無人運転の車両が「前後不覚」に陥ったとは。新交通システムでの逆走は聞いたことがないという

▼原因は調査中で故障とは決めつけられぬが、新システムは事故など起こさぬという根拠のない過信がなかったか

▼機械の便利さを手放すことはできぬ以上、事故も故障も起こさぬためのチェックを怠るまい。半世紀前のエヌ氏に笑われる。

 

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