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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 ヨットは向かい風に逆らって進むことができる。いかにしてか、素人には飛行機が空を飛ぶのに通じる不思議にも思える。乗る人には常識だろうが、ジグザグに走るのだという

▼風の真正面には、進めないものらしい。飛行機の翼にも働く揚力を利用して斜めに進み、また逆向きにと繰り返す。そうして目的地に向かうのだそうだ

▼小型ヨットを操った五十二歳の全盲のセーラー岩本光弘さんが先日、福島県の港に到着した。疲れが吹き飛んだ時の笑顔が紙面にある。約一万四千キロを無寄港で。道中の嵐を乗り越えて、太平洋横断の快挙である

▼いくつもの逆風の中を進んできた人だ。先天性の弱視で、高校生のころに視力を失った。死のうとして本当に橋の上に立っている。見えないことにもきっと意味はある、人々を励ますことだと考え直したそうだ。その思いは「揚力」になっただろう

▼キャスターの辛坊治郎さんとの前回の挑戦は失敗している。漂流し、自衛隊に助けられた。無謀だと多くの批判を浴び、深く落ち込んだという。あきらめない姿を若い人に見せたいという思いで戻ってきた

▼向かい風はだれにでも吹くものだろう。職場や学校などで、逆風を感じる人が増える連休明けも近い。風を真正面で、受けられないときはわずかな角度でいい。斜めに、また斜めに。岩本さんのヨットを思い浮かべようと思っている。

 

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