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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 ゴルフの「球聖」と呼ばれた名手ボビー・ジョーンズは、マスターズの創始者だ。フェアプレーの逸話とゴルフを人生の起伏に重ねた深い言葉でも知られる。「私は勝った試合から学んだことは何もなかった」もその一つ。敗北こそが教師であったと告げる

▼肉体の衰えに、けがに、自分自身の心に。ずっと負け続けだったタイガー・ウッズ選手が、そのマスターズで勝った。長い不振と引退危機を越えての十一年ぶりメジャー制覇による復活である

▼勝ち方が味わい深い。かつてのような豪快なドライバーショットはもうみられない。ライバルを問題にしない圧倒的な強さもない。経験と技術、冷静さを武器にものにした一打差の勝利だ。最後はボギーで逃げ切った。どん底を経て生まれ変わったような姿があった

▼女性スキャンダルに、長引いた腰や膝のけが。薬物の影響下で車を運転し、逮捕された時のうつろな表情にもはや復活は難しいだろうと感じた人も多かったことだろう

▼人は、敗北からも学べるのだと教える一勝ではないか。子どもたちと抱き合い、「これまでの優勝の中で間違いなく一番大きい」と言った

▼<人生の価値はどれだけ財産を得たかではない。何人のゴルフ仲間を得たかである>もまた球聖の言葉という(『球聖、ボビー・ジョーンズ永遠のゴルフ哲学』)。何人の心をふるわせたか。価値ある一勝だ。

 

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