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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 作家にとって、作品の登場人物をどう名付けるかは、時に一大事らしい。小説家の夢野久作は随筆に書いている。<創作の出来不出来は、その作中に活躍する人物の名前の選(えら)み方一つに在(あ)ると云(い)ってもいい。いい名前ができると…筋がおもしろく変化して来る>

▼「明智小五郎」などを挙げて、服装までも眼前に浮かぶような名前があるのだと書いた。名前に筋書きを導くような力があるからこそ、命名に悩み、苦しまずにいられない。そんな心中も明らかにしている

▼想像の世界のことではある。が、現実の世界でも、その名前が「王子様」となれば、なんでもないはずの場面で、筋書きが変化する場面が訪れよう

▼店で会員証をつくろうとして偽名を疑われ、自己紹介で笑われるのだという。山梨県の十八歳の男子高校生が、王子様の名を改めたいと申し出て、甲府家裁に認められた

▼母親が願いを込めて付けた王子様だったそうだが、高齢になったときにどうなるのかという心配を含め、男性の不安は理解できる。改名後の「肇」は『貧乏物語』で知られる経済学者河上肇にちなむらしい。悩みを離れて別の筋書きを生きられそうだ

▼個性的な名前を表すキラキラネームという言葉が目立つようになったのはこの十年ほどのことだろうか。社会で活躍する人物もこれから増えよう。同じような境遇にある人たちの存在を想像する。

 

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