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社説

補助金一転交付 文化庁は反省と検証を

 愛知県が昨年開いた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」への補助金を不交付とした文化庁が、一転して交付を決めた。こうした混乱に至ったことを同庁は率直に反省し、経緯を検証するべきだ。

 あいちトリエンナーレは、三年ごとの開催。昨年は、従軍慰安婦を象徴する「少女像」などからなる企画展が、「反日」といった激しい抗議を受けてわずか三日で中断する異常な状況となった。

 文化庁は愛知県に補助金七千八百万円を交付する予定だったが、手続き上の不備があったとして、全額の不交付を決定した。芸術家や識者らからは「事実上の検閲」と強い抗議の声が上がった。県側も訴訟を辞さない方針だった。

 だが文化庁は今月二十三日、約千百万円を減額するものの、補助金を交付することを表明。いったん内定した補助金の交付を一方的に取り消し、さらにそれを撤回するという極めて異例な事態だ。

 これを受けて識者からは、今回の決定を歓迎しつつも、どのような論理で不交付を撤回したのか明らかにするよう同庁に求める声が上がった。もっともだろう。

 企画展に対しては、賛否が大きく分かれた。自由な社会において芸術作品に多彩な見方や意見があるのは当然だが、残念ながら否定する人の側には、テロ予告など表現や言論の自由を脅かす言動もあった。そうした状況の下で文化庁がまず行うべきは、有形・無形の圧力や暴力に抗して、表現者の側に立つことではなかったか。

 だが同庁が実際に取ったのは、愛知県側の不備をとがめる対応であり、問題行動を黙認する結果にもなったと言わざるをえない。その点、深い反省を求めたい。

 そもそもなぜ補助金は不交付とされたのか。政府は「文化庁の判断」としてきたが、そこに企画展を問題視した政治家などの介入はなかったのか。逆に、そうした意見に対する同庁の側からの過度な「忖度(そんたく)」はなかったのか。

 同庁が今後、自主的で自律的に施策を遂行するためにも、不交付の決定から撤回までの経緯を検証し、公開することが必要だろう。

 一九六八年の設置から半世紀あまりとなる文化庁。人が人らしく生きる上で大切な文化の営みに関わる官庁だが、一方でこの間、かけがえない歴史遺産である高松塚古墳(奈良県)の壁画の劣化を糊塗(こと)し、信頼を失いもした。今回の問題でも自らを戒め、今後の文化行政に適切に反映させてほしい。

 

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