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社説

元稲沢市議無期 理欠く中国の「法治」

 中国での覚醒剤事件で死刑を含む厳刑を求刑された元愛知県稲沢市議に無期懲役が言い渡された。不当な判決であり、重大な人権侵害や公判の不透明性など、理を欠く中国法治の問題が露呈した。

 広州市中級人民法院(地裁)は八日、麻薬密輸罪で元稲沢市議の桜木琢磨被告(76)に無期懲役を言い渡した。被告は死のふちから生還できたものの、公判での検察の有罪立証は不十分であり、不当な判決である。

 中国の法律は原則として起訴から三カ月以内に判決を出さねばならないと定めているが、今裁判の長さは異様だ。「懲役十五年以上か無期懲役または死刑」と求刑された二〇一四年八月の結審後、二十回も判決が延期された。

 裁判所は「事件が複雑で証拠を確認する必要がある」と、毎回同じ理由で勾留を延長してきた。だが、弁護人によると、法院や検察が結審後、桜木被告から新たに事情を聴いたことはないという。

 中国の裁判でも99%近くは起訴から半年以内に判決が出されている。高齢の被告が勾留中に手術を受けて入院した事情なども考えれば、極めて長い判決延期は甚だしい人権侵害である。

 判決公判は、日本メディアに傍聴が許されなかった。他国の公職者に死刑を含む厳刑が求刑された裁判であるのに、裁判の透明性は不十分というほかない。

 桜木被告は旧知のナイジェリア人から頼まれ中国国内でスーツケースを運んだが、一貫して「覚醒剤が入っていたことを知らなかった」と主張してきた。

 起訴された麻薬運搬罪の成立には、麻薬だと明確に知りながら故意に運ぶことが必要である。検察は公判でこの点を明確に立証できなかった。弁護人によると、中国の裁判でも「疑わしきは被告人の利益に」との原則があるという。そうであるなら、裁判所は無罪判決を出すべきだった。

 判決公判では罪名が麻薬密輸罪に変更されていた。「最終目的地が日本だった」との理由だが、結審まで中国国内での「麻薬運搬罪」について証拠調べや立証が行われており、理不尽な変更だ。その点で判決の正当性を欠く。

 中国政府が唱える「依法治国」は本物の法治とはいえない。被告の逮捕とそれに続く裁判は、尖閣問題で日中関係が冷え込んだ時期と重なる。もしも日本の公職者への無罪判決を政治的思惑が阻んだとすれば、なおさらである。

 

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