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社説

優先順位を違えるな 安倍再改造内閣 

 第四次安倍再改造内閣が始動した。安倍晋三首相は憲法改正への意欲を重ねて示したが、改憲を要する切迫性に乏しい。優先順位を違(たが)えてはならない。

 安倍首相はきのう、内閣改造後の記者会見で第一次内閣を含めて十一回目となる組閣の狙いを「安定と挑戦」にあると強調した。

 再改造内閣の顔ぶれを見ると、二〇一二年十二月の第二次内閣発足から首相を支える麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官を留任させるとともに、総務相に高市早苗、厚生労働相に加藤勝信両氏を再起用。河野太郎外相を防衛相に、河野氏の後任に茂木敏充経済再生担当相を横滑りさせた。

麻生氏続投への違和感

 初入閣は十三人に上り、十七のポストが入れ替わる安倍内閣では最も大規模な改造となったが、重要閣僚など政権の骨格を維持することで、政権運営の「安定」を優先させたのだろう。

 自民党の派閥別に見ると、派閥に属さない無派閥が六人と最も多く、細田、麻生両派がそれぞれ三人、竹下、岸田、二階各派がそれぞれ二人と、昨年の党総裁選を戦った石破茂元地方創生担当相率いる石破派と石原派を除く各派閥からほぼ均等に起用している。

 かつて権勢を誇った自民党の派閥は、平成の政治改革を通じて、その力を失ったとはいえ、党内では依然、一定の影響力を持つ。

 主要派閥からバランスよく起用することで無用な摩擦を避け、政権運営への協力を取り付ける意図が透けて見える。

 とはいえ、麻生氏を副総理兼財務相という要職に起用し続けていることには違和感を禁じ得ない。

 麻生氏は、森友学園をめぐる決裁文書の改ざんや、事務次官が辞任に追い込まれたセクハラ疑惑を巡り、財務省のトップとして責任を取るべき立場にある。

成果が問われる小泉氏

 にもかかわらず、またも続投とは、首相が一連の政権不祥事を軽視しているとしか思えない。

 首相の側近でもある萩生田光一氏の文部科学相起用も同様だ。

 萩生田氏は、首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」傘下の大学で客員教授を務めていたことがあり、同学園の獣医学部新設では、官房副長官だった萩生田氏が新設条件の修正を指示したメールの存在が指摘されている。

 森友・加計問題は、国有地売却や大学の学部新設を巡り、公平・公正であるべき行政判断が、首相らへの忖度(そんたく)で歪(ゆが)められたか否かが問われた、国の根幹に関わる問題だ。閣僚続投や新任により不問に付すわけにはいかない。

 今回の内閣改造で最も注目されるのは小泉進次郎氏の環境相起用だろう。現在三十八歳。〇八年に三十四歳で少子化担当相に就いた小渕優子氏、一九九八年に三十七歳で郵政相になった野田聖子氏に次ぐ、戦後三番目の若い閣僚だ。

 将来を担うリーダー候補の一人として、外相の茂木氏や厚労相の加藤氏、防衛相の河野氏らと閣内で競い合わせる布陣である。

 とはいえ、小泉氏は人気や期待が先行している感は否めない。東京電力福島第一原発の汚染水対策など、難問も山積する。閣僚としてどんな成果を上げられるのかこそ、問われなければならない。

 首相はきのうの会見で「令和の時代の新しい日本を切り開いていく。その先にあるのは憲法改正への挑戦だ。困難でも、必ずや成し遂げる決意だ」と強調した。

 二〇二一年九月に党総裁の任期を迎える首相は、一九五五年の自民党結党以来「党是」としてきた憲法改正を実現し、歴史に名を残したいに違いない。

 とはいえ、改憲が国民にとって喫緊の課題とはとても思えない。

 共同通信社が八月十七、十八両日に実施した最新の全国電話世論調査によると、安倍首相の下での改憲に反対が52・2%と、賛成の35・5%を大きく上回る。

 参院選直後の七月二十二、二十三両日に実施した同様の調査では安倍内閣が優先して取り組むべき課題は「年金・医療・介護」が48・5%と最も多く、「景気や雇用など経済政策」(38・5%)「子育て・少子化対策」(26・0%)と続く。「憲法改正」は6・9%にとどまる(複数回答)。

まっとうな政治に戻せ

 社会保障や雇用など国民の多くが望む暮らしの安定よりも、国民が望まず、緊急性もない改憲を優先させるようなことがあってはならない。衆参両院での与党多数という政治資産は、国民生活の安定にこそ、振り向けるべきである。

 安倍首相は十一月には在職期間が戦前の桂太郎を超え、歴代一位となる見込みだが、「長きをもって貴しとせず」である。

 国民やその代表たる国会と謙虚に向き合い、政治の信頼を回復する。そんなまっとうな政治姿勢こそ安倍政権には求められている。

 

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