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社説

国有林法改正案 「宝の山」を守れるか

 種、水、海、そして今度は森なのか。市場開放、外資を含む企業参入、大型化、集約化、効率化…。農林水産業も“新時代”だと首相は胸を張る。だがこれで本当に、その持続可能性を守れるか。 

 安倍首相は、年頭の施政方針演説で「長期間、担い手に国有林の伐採・植林を委ねることで、安定した事業を可能にします」と“林業改革”にも意欲を見せた。

 現在参院で審議中の国有林野管理経営法改正案は、主要農作物種子法の廃止、改正漁業法などと同様、外資を含む大企業に大きく門戸を開き、官邸主導で大規模化、効率化を促進させる、農林水産業の「成長産業化」戦略の一環だ。

 昨年五月、森林経営管理法が成立し、持ち主が管理できない民有林を、市町村を仲立ちに、“意欲ある経営者”に集約させる制度ができた。そして今度は、全森林面積の三割を占める国有林−。

 国有林の伐採は、年ごとに場所などを特定し、入札により、民間の事業者に委託されている。

 改正案では現状数ヘクタールとされていた伐採の規模が数百ヘクタール、一〜数年だった契約期間を最大五十年に拡大。契約対象は、その規模や長さに見合う経営基盤を有すと認められる事業者だ。規模拡大には巨額の投資が必要で、改正の意図するところは、外資を含む大手の参入促進にあるのだろう。

 合板製造技術の飛躍的進歩などもあり、国産の安価な木材の需要は増えている。伐採の適期を迎えた国有林の供給力を高めようという狙いはわかる。

 しかし、地元の中小事業者が締め出されることになるのではという、懸念の声も、もっともだ。

 最大の不安は、事業者に森林再生(造林)の義務がないことだ。

 現行のルールでは、伐採と再生は別々の業務とされ、原則として別々の業者に発注されている。

 ところが新制度では、同じ業者に一体で発注し、コスト低減を図ることにもなっている。伐(き)るだけ伐って植林を怠ったとしても、直接罰する規定はない。木材価格次第では、荒れ山を残して事業者が撤退し、災害の危険も増す−。そんな恐れも否めない。

 温暖化が進み、脱炭素の時代、森林はバイオマス、すなわち化石燃料に代わる巨大な国産エネルギー資源にもなり得る文字どおりの「宝の山」、国民共有の財産だ。

 目先の利益だけでなく、どうすれば森の持続可能性を保てるか−。慎重かつ深い議論を望む。

 

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