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社説

温暖化対策 “物差し”はできたが

 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による温室効果ガス排出量算定のための新指針が、採択された。温暖化を止めるには排出量の「見える化」が必須。だが大切なのは、それからだ。

 IPCCは、世界百九十五カ国・地域の科学者や政府関係者が参加する、温暖化問題の巨大シンクタンクである。最新の科学的知見を取り入れながら、各国が温室効果ガス排出量を把握するための算定法のガイドライン(指針)を作成し、改定を重ねてきた。今回は二〇〇六年以来の改定だ。

 温室効果ガスの排出量は、現行の指針のもと、例えばガソリンや電気、天然ガスなどの使用量に、単位当たりどれだけ温室効果があるかを示す「排出係数」を掛け合わせ、国ごとに算出されている。

 来年から始まる温暖化対策の新たな国際ルール、パリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命から二度未満、できれば一・五度に抑えることを目標に据えている。

 IPCCは、二度上昇では、異常気象や海面上昇による被害のリスクが大幅に高まると、強く警告を発している。

 パリ協定では、参加各国が温室効果ガス削減の自主目標をそれぞれ決めて申告し、その達成状況を報告、検証し合いながら、五年ごとに目標を引き上げていくことになっている。

 「一・五度」目標の達成には、各国が現段階で掲げる削減量を、約五倍にする必要があり、それには、各国が削減状況をより正確に把握して、「見える化」し、すべての国が同じ土俵で正しく競い合える環境が欠かせない。

 新指針には、燃料電池などに使われる水素の製造に伴う排出量や、フロンと同様、温室効果の高いことがわかった代替フロンの新たな算定法、観測衛星によるデータの活用などを盛り込んだ。新指針はいわば、パリ協定の成果を測る“物差し”なのである。

 物差しは手に入れた。だが、言うまでもなく、IPCCやパリ協定が求めているのは「目標」ではなく、それに基づく「実行」だ。

  先月、日本政府が公表したパリ協定のための「長期戦略案」は、二酸化炭素(CO2)の地下貯留(CCS)や新型の高速炉など、未確立の技術に大きく依存する一方で、大量排出源の石炭火力発電所を減らすことにはひどく及び腰、とても“野心的”とは言い難い。

 精緻な物差しに見合うよう、見直すべきではないのだろうか。

 

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