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社説

ニセ電話凶悪化 高齢社会が抱える宿題

 高齢者の方々は電話に出ないで−。悲しい呼び掛けを徹底しなくてはいけない。大金を奪う詐欺の手法だったニセ電話が命まで奪うようになってしまった。背景を見極め、解決策を探りたい。

 ニセ電話による詐欺事件は、平成に生まれた犯罪だ。「オレオレ詐欺」の呼称で、新聞紙面などに登場するようになったのは二〇〇三(平成十五)年。息子などを装ってトラブルに巻き込まれたと電話をかけて、高齢者から大金をだまし取る事件が相次ぐようになった。平成の終わりにさらに凶悪化したことに、やりきれない思いが募る。

 犯行組織が肥大化した背景には携帯電話や会員制交流サイト(SNS)の普及がある。他人や架空名義などの携帯電話を使用することで、知らない者同士が分業体制で犯罪を実行することが可能となった。

 電話をかける「かけ子」や現金自動預払機(ATM)で金を引き出す「出し子」など、会社の仕事のように組織化され、高齢者の名簿や電話のかけ方などのマニュアルの精度も高くなっていく。東京都江東区で八十歳の女性が殺害された事件や渋谷区で高齢夫婦が被害にあった強盗事件では、事前に様子を探る「アポ電(アポイントメント電話)」があった。詐欺で編み出された手法だ。

 ニセ電話詐欺の昨年の認知件数は全国で約一万六千件。六十五歳以上の被害が八割近くを占める一方、摘発された約三割は少年で、増加傾向にある。多くが被害者から現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」だ。

 ニセ電話が横行するようになって十数年。世代間が断絶し、高齢者を資金源のようにすることへの罪の意識が希薄になってはいないかと懸念する。本紙記者が昨年、多摩少年院で取材した元受け子の少年は、指示役の男への恐怖もあったが「だまされる方が悪い」と、当時は自分を正当化していたという。

 相次ぐ事件を受け、捜査当局などは、在宅時も留守番電話にしてかけ直すなど、電話に出ないことを高齢者に勧めている。しかし孤立を深めるだけでは、犯罪の温床を抜本的に断ち切ることにはつながらないだろう。知らない大人と口をきかないよう子どもにも教える時代。犯罪弱者の危険を排除しながら地域や世代の絆をどう結び直すか。高齢化が進む中で、私たちの社会は重い宿題を抱えているとの認識を共有したい。

 

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