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<検証 あいちトリエンナーレ>(中)介入 補助金不交付、政治圧力か

コラージュ・井上彰吾

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 九月二十六日午後一時すぎ、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」を所管する愛知県文化部に一本の電話が入った。

 「大臣が不交付決定を発表しました」。電話口でそう切り出したのは、文化庁地域文化創生本部事務局長の三木忠一。後は「資料をメールで送ります」とだけ言うと、電話は切れた。

 芸術祭に出すはずだった補助金を支払わない。手のひらを返すような文化庁の決定。芸術祭の実行委員会長で知事の大村秀章が、企画展「表現の不自由展・その後」の再開を目指すと表明した翌日だった。

 芸術祭は、過去三回とも文化庁から補助金を受けてきた。各地の文化を生かした地域振興の取り組みに対する補助事業。今年は四月二十五日に有識者による審査を経て採択が決まり、五月三十日に県が約七千八百万円の交付申請を出していた。

 「唐突だった」と県幹部は言う。企画展が中止となった八月四日、京都の文化庁に出向いて経緯を説明し、その後も十九日と九月十八日の二回、電話で抗議件数などを報告してきた。だが、不交付決定の理由とされた「運営上の懸念を申告しなかった」という点は、そもそも聞かれもしなかった。

 「採択後の審査は通常、金額に誤りがないかを見る程度。今回の判断は極めて異例だ」。県美術館の学芸員を務めていた名古屋大教授の栗田秀法はそう語る。文化庁の三木も、報道陣の問い掛けに「異例だと思う」と認めている。

 「異例の決定は、戦時中の慰安婦を象徴する少女像などの展示に対する政治的圧力ではないか」。そんな声を文部科学相の萩生田光一は否定するが、関係者の間では疑念が消えない。官房長官の菅義偉が既に八月二日の時点で、補助金を巡り「精査する」と不交付の可能性をにおわせていたからだ。

 九月二十六日の不交付決定の後、大村は「採択決定が覆る合理的理由はない」と憤り、「中身がいかんからということだと推定せざるを得ない」と言い切った。翌二十七日にあった自民党県議団の幹部会議。ある県議が「中央」からの話として「再開を目指す知事に同調するなと言われている」と告げた。出席者は少女像などの展示をよく思わない政権の意向だと受け止めた。

 芸術祭の会長代行を務める名古屋市長の河村たかしは、展示内容を知らされていなかったとして「正直に申告せないかん」と不自由展側の手続きの不備を主張し、文化庁の決定を支持。展示が再開された今月八日には「陛下への侮辱を許すのか」とプラカードを掲げて会場敷地内に座り込み、居合わせた右派系市民団体らと一緒に展示内容に抗議した。河村は慰安婦問題などで、かねて右派的言動を繰り返している。

 こうした動きを受けて芸術祭最終日の十四日、日本文化政策学会は「意向に見合う活動をしなくては自治体などに補助金が取り消されるのではないかという不安や萎縮効果を与える」と、不交付決定の撤回を求める声明を出した。名古屋大の栗田も文化庁の判断を危ぶむ。「後出しジャンケンで補助が出なくなるなら当局のご機嫌を伺うしかなく、文化統制になる」

 (敬称略)

 

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