中日春秋

2020年8月5日 05時00分 (8月5日 05時02分更新)

 <帰ろかな 帰るのよそうかな>。高度成長期の一九六五年に大ヒットした北島三郎さんの「帰ろかな」(作詞・永六輔、作曲・中村八大)
▼歌の主人公は東京で働いているのだろう。故郷にいる母親の顔を見たいが、簡単には帰郷できない事情でもあったか、ためらっている
▼音楽プロデューサーで作家の佐藤剛さんがこの曲の歌詞について書いていた。永六輔さんが最初に書いた歌詞は「帰ろかな」ではなく「帰って来い」だったそうだ。故郷にいる人間が東京にいる男に帰郷を求める歌だったらしい。書き直してもらってよかったとあの歌のファンなら思うのではないか。帰るか帰るまいかで思い悩む歌だから胸にしみる
▼新型コロナウイルスの感染が拡大する、この夏。<帰ろかな 帰るのよそうかな>と恒例の帰省をどうするかで思い悩む方もいらっしゃるだろう
▼不安な時期だからこそ親の顔を見たい。自分も顔を見せて安心させてあげたいが、移動による感染リスクを思えば答えは出しにくかろう。帰省する場合は細心の注意をお願いしたい。せっかくの帰省が「反省」になっては台無しである
▼<帰省ラッシュ。それは親を想(おも)う子どもたちの行列です。>。何かの広告にそんなコピーがあった。花火大会。野外コンサート。平穏な夏休み。加えて親を想う心優しい行列まで奪おうというのか。コロナの夏が恨めしい。

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