清水庁舎移転 住民投票が否決見通し

2020年8月4日 05時00分 (8月4日 05時03分更新)
 静岡市役所清水庁舎移転の是非を問う住民投票条例案を審議する市議会八月臨時会は三日、開会した。住民団体からの直接請求を踏まえ、田辺信宏市長は「市民の意見集約が十二分に図られ、議会での意思決定がすでにされている」として住民投票の実施に反対する意見を付け、条例案を提出した。市議会でも否定的な意見は多く、住民投票の実施を求める五万人超の市民の意思は届かないのか。七日に採決がある。 (谷口武)
 「これからの施策にはアフターコロナに対応する考え方が必要だ。コロナ以前の計画を信じるのはどうなのか」。昨年九月議会で住民投票の実施を提案した会派「創生静岡」の石井孝治市議は、三日の臨時会本会議でそう追及した。松浦高之企画局長は「方針に変更はない。コロナの影響については見直しを進めている」と述べるにとどまった。
 市の計画によると、老朽化した清水庁舎を現在地から北に約一キロのJR清水駅東口に二〇二三年にも移す。総事業費は約九十四億円を見込む。昨年十月に市議会で移転案が可決されたが、新型コロナウイルス感染症対策で厳しい懐事情を踏まえ、市は今年五月、計画の凍結を表明した。
 移転予定地は海岸から約二百メートルで、南海トラフ地震の津波による浸水想定区域にあることから、地元の反対は根強い。「静岡住民投票の会」の神戸孝夫代表は「延期ではなく、移転中止を求めて活動する」と話し、住民投票の直接請求に必要な約一万一千七百筆を大幅に上回る五万二千三百人の署名を集めた。
 清水市との合併(〇三年)後、静岡市で住民投票の実施例はない。市企画課によると、住民投票の実施には二億五千万円かかる。財源確保も苦しく計画を凍結している中、市議会の多数は、住民投票の実施に懐疑的とみられる。
 役場庁舎の移転や新築を巡っては近年、市民の直接参加による住民投票で賛否を問うケースが多い。住民投票を研究する成蹊大法科大学院の武田真一郎教授(行政法)の調べでは、一二年の鳥取市を始めに、愛知県新城市や山梨県南アルプス市など、一六年までの五年間に計七件、住民投票が実施された。
 うち四件で市の当初案は見直し・縮小された。武田教授は「投票があれば民意は尊重されやすい。住民の意見を聞くのが議員や首長の仕事で、聞かない理由はない」とする。
 住民が一定の署名を集め直接請求をしても、議会の決議を経なければ住民投票までたどり着けない。武田教授は「住民投票そのものは反対運動ではなく、賛否に耳を傾けて議論する機会だ」と強調する。
 静岡大の日詰一幸教授(行政学)は「推進と反対の両極端の意見が際立ち、論点がまだ整理できていない。住民投票の前に、その地域で暮らす人たち間の意見を調整していくことが望ましい」と指摘する。

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