実名で自ら感染公表 浜松の男性がネットで「おわび」

2020年8月2日 05時00分 (8月2日 10時53分更新)
 新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した浜松市内の二カ所の飲食店を訪れ、陽性と判明した同市東区の男性(38)が、インターネット上で実名を出して感染を公表し、「おわび」の文章を掲載した。一日、本紙の電話取材に誹謗(ひぼう)中傷があったことを明かしつつ「いろんな人にご迷惑を掛けてしまった」と実名公表に踏み切った思いを語った。 (篠塚辰徳)
 男性は、不動産業「まるたま不動産」社長の伊藤武司さん。同社のホームページ上で「数多くの方々に、取り返しのつかない多大なるご迷惑をお掛けしてしまいました。保健所から行動歴を聞かれた際、一部虚偽の発言をしてしまいました。誠に申し訳ございませんでした」などと謝罪文を載せた。七月二十六日に退院し、病院から外出してもいいと認められている。
 伊藤さんは、仕事の取引先との懇親会で七月十日にマジックバー「手品家 浜松店」、十四日にラウンジ「ブリリア」を訪れ、十五日夜に三八・四度の熱が出た。十六、十九日に病院を受診。幼い子どもを心配し、PCR検査を受けた。念のために受けたが、陽性の結果に言葉を失った。
 本紙の調べでは、市が二十四日に両店でのクラスター発生を公表する前から、伊藤さんはネット上で感染拡大の「犯人」と責められ、誹謗中傷に悩まされてきた。三月下旬以降、首都圏に行っていないにもかかわらず「東京からコロナをもらってきた」などと事実と異なるうわさが広がった。市保健所の聞き取りに、当初は「迷惑を掛けたくない」と訪れた店名を伏せたこともあり、ネットでの非難は日に日に過激さを増した。
 子どもと一緒に写った写真と実名が会員制交流サイト(SNS)で拡散され、連日、三十件ほどの無言電話が会社から転送される携帯電話にかかってきた。「おまえが(市が検査する市内の接待を伴う飲食店の全従業員)二千八百人分のPCRの代金出せよ」と会社宛てにメールもあった。伊藤さんをかたるツイッターの偽アカウントが作られ「おまえにも感染させるぞ」などの投稿も出回った。
 こうした感染者を悪者にする風潮について、浜松医大の堀井俊伸教授(感染制御学)は「感染者を責める行為は無意味。感染拡大防止に何の役にも立たないし、不安の解消にもつながらない」と指摘する。
 その上で「今やるべきは、感染拡大を防ぐために、一人一人が万全の対策を取ること。外出先では密な空間をできる限り避け、近い距離に人がいるときはマスクを着けて、大きな声でのおしゃべりを控える。クラスター発生を教訓にするべきだ」と呼び掛ける。

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