「タゴール・ソングス」佐々木美佳監督(福井県出身) 人生に寄り添う歌

2020年8月1日 05時00分 (8月1日 10時58分更新)
タゴールの歌の奥深さを「今は理解できなくても、いつかは分かるのではと思える」と話す佐々木美佳さん=富山市のほとり座で

タゴールの歌の奥深さを「今は理解できなくても、いつかは分かるのではと思える」と話す佐々木美佳さん=富山市のほとり座で

  • タゴールの歌の奥深さを「今は理解できなくても、いつかは分かるのではと思える」と話す佐々木美佳さん=富山市のほとり座で
  • 「タゴール・ソング」の1シーン (C)nondelaico
 インド東部の西ベンガル州とバングラデシュに広がるベンガル地方。両国の国民的な偉人、詩人ラビンドラナート・タゴールが残した二千もの歌は歌い継がれ、今も人々の人生の中で息づいている。ドキュメンタリー映画「タゴール・ソングス」を監督した佐々木美佳さん(福井県鯖江市出身)は「新型コロナで先が見えない今こそ、人の内面に語りかけるタゴールの言葉には訴えるものがある」と語る。(松岡等)
 社会活動家でもあり、自ら英訳した詩集が評価されて非欧州語圏で初めてノーベル文学賞を受賞したタゴール。その存在は、英国からのインド独立で精神的な柱となり、歌は後にインド、バングラデシュそれぞれの国歌になった。
 そんな偉人が残した歌がなぜ今も愛され続けるのか。答えを追うように、コルカタやダッカ、東京でさまざまな人々にカメラが向けられる。習い事として継承される一方、若者の間でラップとしてカバーされたり、市井の人がカメラの前ですぐに歌い始めたり。時代や世代を超えて生活と人生に歌が深く根付いている様が映し出される。タゴールを語る人々の表情、歌う時の目の輝きが印象的だ。
 多くのタゴール・ソングの中でも、冒頭レコードから流れるタゴール自身の歌による「ひとりで進め」は、通奏低音のように映画の中で響いている。
 「もし君の呼び声に誰も答えてくれなくても/ひとりで進め/ひとりで進め/ひとりで進め/もし誰もが口を閉ざすのなら/もし皆が顔を背けて恐れるのなら/それでも君は心を開いて/本当の言葉をひとりで語れ」
 保守的な家庭に反発する女子大生、ストリートチルドレンから立ち上がろうとする若者、孤独な中で歌の神髄を弟子に伝えようとするタゴール・ソング教師…。タゴールの言葉と旋律はそれぞれの人生に寄り添っているかのようだ。
 佐々木さんは浄土真宗が身近にある福井で育ち、仏教のルーツのあるインドへの関心から東京外国語大ヒンディー語学科に進学。ベンガルの文学や文化に魅了されタゴール・ソングに出合った。卒論のテーマにする一方、歌と人々との関係を描きたいと二十六歳で初の映画に挑んだ。
 「新型コロナなどで世の中がどうなっていくか分からない状況にある中、人の内面に語りかけてくるタゴールの言葉は、自分が何をしたいのか、どうしたいのかを考える上で強いメッセージ性があると思う。こういうタイミングだからこそ見てもらいたい」

◇金沢の上映 29日から


 シネモンド(金沢市)で二十九日から上映。

【メモ】ラビンドラナート・タゴール(1861〜1941年)=インドを代表する詩人、哲学者、劇作家、作曲家。コルカタの名家に生まれ、インドの伝統的教育を受けるとともに英国に留学。帰国後は詩作などに専念し、民族主義を高揚した。1913年に代表的詩集「ギーターンジャリ」で非欧州語圏の作家として初のノーベル文学賞を受賞。数多くの歌や舞踊劇を作り、特にベンガル地方の古い民謡を元に多くの新しい旋律を生み出した。小説に「ゴーラ」など。16年以降、5度来日している。


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