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リニア着工 県庁で有識者会議、各委員発言

2020年8月1日 05時00分 (8月1日 05時03分更新)
県の有識者会議で、あいさつする難波喬司副知事(左中央)=県庁で

県の有識者会議で、あいさつする難波喬司副知事(左中央)=県庁で

 県庁で三十一日にあった有識者会議で、委員の主な発言は以下の通り。一部はウェブ参加。
【地質構造・水資源専門部会】
 部会長・森下祐一 静岡大客員教授(地質学) 国の第四回有識者会議を巡り、そろそろまとめに入ると報道されているが、「現在のデータから解釈するとこうなる」という段階。計算結果に至る過程が明らかにされておらず、決してまとめに入れるような段階ではない。(今後、議論になる)畑薙山断層は、(静岡・山梨県境のトンネルを掘る際に山梨県側への湧水流出が避けられないとされる根拠の)下向き工法の説明でいきなり出てきたが、産業技術総合研究所の推定データだともっと南にある。JR東海はそれを延長して主張しているが、大きな構造としてみると、井川・大唐松山断層とみるのが妥当ではないか。
 大石哲 神戸大都市安全研究センター教授(地圏環境工学) 第四回有識者会議でこれまでより詳細な資料が出たことは評価したい。ただ、三百メートルの地下水位低下の試算には懸念がある。JRは一部の地質の水の浸透しやすさのデータを「外れ値」として除外して示しているが、根拠が示されていない。その結果通りであれば、JRの試算の百倍の速さで流量の低下が起こりかねない。(水が抜けやすい)破砕帯があるのではないかと指摘してきたが、もしあれば七〜八年かけて三百メートルの地下水位の低下が起こるのではなく、一カ月程度のスピードで低下してコントロールできなくなるのではと懸念される。
 塩坂邦雄 環境調査会社「サイエンス」技師長、土木学会特別上級技術者 一〜二年同じことを言っているが、JRは破砕帯の水の浸透しやすさの調査をせず、一切、生データを取っていない。岩盤内(の水の動き)もコンピューターで計算しているが、地質構造を反映していない。JRが示した図ではトンネルの周囲の地下水に影響が出るというが、破砕帯は南北方向に続いており、南北に広く影響が出るはずだが、シミュレーションされていない。それをやれば、(南アルプス国立公園の)規制区域にも広く影響が出てくるはずだ。
 丸井敦尚 国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センタープロジェクトリーダー(地下水学) 国の会議では激しく攻め立てていないので賛成と思われているようだが、そうではない。JRには水収支の概念モデルを作るよう求めているが出ないので議論がかみ合わない。学生の答案だったら採点もしない。JRの計算式は同じ地質が無限に続く前提で南アルプスでは使えない。上流域と下流域のモデルもなければ川と地下水のモデルもない。JRの今のモデルは、百メートル×百メートル×二十五メートルの幅で作っているが、現地のデータを反映できていない。これまでの会議では「ここが不十分だ」と指摘するやり方で進めてきたが、あまりにも時間がかかり納得いく回答が得られないことも多いので、委員から積極的に「こうしてほしい」と提案していきたい。
 【生物多様性専門部会】
 部会長・板井隆彦 静岡淡水魚研究会会長 国交省の有識者会議の趣意書や規約はあったのか。県が求めた会議だったのかが気になる。今の会議に生物多様性の委員を追加するのか、別の部会を設けるのか。地下水位低下の生態系への影響は非常に大きい。減水空間以外にも広がると考えた議論が必要。地下水位の低下量推定は、西俣や千石の斜坑、導水路による影響が捕捉されなければ正確ではない。
 岸本年郎 ふじのくに地球環境史ミュージアム教授(昆虫分類学・生物地理学) 議論が不十分。地下水位の予測地図は初めて出てきたが、生態系への影響は高山部分まで影響が及ぶ恐れが出てきた。検討が不十分ということが明確になってきた。しっかり国交省にも認識していただいて、包括的に議論しないと話が始まらない。
 増沢武弘 静岡大客員教授(欠席で代読) 地下水位が三百メートル以上低下した場合、国立公園特別保護地区に指定されている独特な自然環境を有する区域が含まれている。高山植物の生育など生態系への影響が懸念されることから、JRに生物多様性専門部会の場で説明してもらいたい。
 三宅隆 NPO法人静岡県自然史博物館ネットワーク副理事長 (静岡工区は)断層が多い地域。東南海地震が起きて断層がずれ、破壊することがあり得るのか。
 山田久美子 県立看護専門学校非常勤講師 地下水位が三百メートル下がるという話は環境影響評価(アセスメント)のときには一切なかった。非常に不満。JRは地下水位を測り続けることで補償できるというがとんでもない。西俣の水生生物は全滅すると思っている。補償なんか不可能だ。
 【オブザーバー】
 蔵治光一郎 東京大大学院農学生命科学研究科教授(森林水文学) 新幹線のトンネルは日本各地にあり、同様の問題が起きている。ほかの都道府県でも住民に懸念がある中で、県レベルで、ここまで国に要求して科学的議論する試みはない。水循環基本法の理念にかなう。
 降水量はすべての表流水と地下水の源。その取り扱いが許容範囲を超えている。(JR東海の)降水量データは、観測所一点だけで推測されている。ほかにも観測所はあり、もっと集める努力が不足しているのではないか。長期間の平均を出しているが、毎年違いがあり毎年の値を出していただかないと検証できない。

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