やきもち地蔵 江戸向かう途中、お寺に祭られて…

2020年7月31日 05時00分 (7月31日 05時00分更新)
龍梅寺にある「やきもち地蔵」

龍梅寺にある「やきもち地蔵」

  • 龍梅寺にある「やきもち地蔵」

◆願い事かない お礼に焼き餅

 昔、昔の話です。
 三方原(今の浜松市北区)は、どこまでも野原が広がっていました。台地のほとりに萩の花に囲まれて、お地蔵様が祭られていました。その辺りの人々は「原のお地蔵様」と呼んで親しみ、折に触れてお参りしていました。
 太吉は、いつもと同じようにお地蔵様の周りの掃除を終えた後、家に帰りました。今日も無事に過ごせたのはお地蔵様のおかげと感謝して床につきました。
 眠りに入るとすぐに「太吉、太吉」と、呼ぶ声が聞こえました。いったい誰だろうと目を開けると、枕元にお地蔵様が立っていました。
 「お、お地蔵様。こんな所までお出かけいただいて、何か急ぎの御用でも」と太吉が尋ねました。
 「いつも尽くしてくれてうれしい限りだが、台地のほとりにずっといると、寂しさが募る。一度で良いから江戸に行ってみたい。太吉、連れて行ってくれないか」
 太吉は、お地蔵様が自分を頼ってくれたことを意気に感じました。
 「承知しました。さっそく明日の朝、旅立ちましょう」
 太吉が答えると、お地蔵様はすっと消えました。
 次の日の朝、太吉は荷車を引き、台地のほとりに出かけました。お地蔵様を乗せると台地を下り、浜松宿に着きました。東海道を東へ、江戸に向かいます。
 龍梅寺(今の浜松市中区天神町)の門前まで来た時です。お地蔵様が突然重くなり、荷車は少しも動かなくなりました。
 「お地蔵様。これでは江戸に行けません」
 太吉は寺に入ると、和尚様に事情を説明しました。
 「江戸に行くつもりが、お寺の前で荷車が動かなくなってしまいました。三方原に戻るのも無理です。どうかお地蔵様をこの寺で祭っていただけないでしょうか」
 和尚様は、快く受け入れてくれました。
 寺にお地蔵様を祭ると、間もなくお参りする人が出てきました。すると、不思議なことに、どんな願い事も見事にかなえられたのです。お地蔵様の評判は、あっという間に辺りの村々に広まりました。
 お礼参りに焼いたお餅を供える人が多くなり、やがて「やきもち地蔵」と呼ばれるようになりました。

<もっと知りたい人へ>
見学場所:龍梅寺 浜松市中区天神町3の43


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