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全勝の白鵬が敗れる波乱、押し相撲はひとつ間違えば怖い…そして優勝争いが面白くなってきた【北の富士コラム】

2020年7月29日 22時06分

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大栄翔(右奥)に押し出しで敗れた白鵬

大栄翔(右奥)に押し出しで敗れた白鵬

◇29日 大相撲7月場所11日目(両国国技館)

 照ノ富士が栃ノ心を破り1敗を守った一番は、立ち合いから何のためらいもなく、がっぷり右四つとなった。小細工なしの気持ちのよいほどの立ち合いである。さすが元大関同士。これは右四つに絶対の自信を持っている証しである。先に上手を引いたのは栃ノ心だったが、その上手が深い。照ノ富士は右差し手を返して浅い位置に上手を引いて完全に胸を合わせる。体の大きな照ノ富士に胸を合わされ、栃ノ心は自分から上手を放し半身になろうとする。よほど苦しかったのであろう。万全の体勢から照ノ富士が寄り切って元大関の一戦を制した。
 照ノ富士の12日目の相手は玉鷲。激しい突き押しの玉鷲は強敵である。今は勝ち越しを決めて大いに気を良くしているだけに相当苦戦が予想される。
 1敗を死守した照ノ富士だが、2敗の正代と御嶽海は共に土がついて3敗となった。正代はこれまで負けたことのない北勝富士に勝ちを焦って自滅した。立ち合いは決して悪くはなかったが、左が入ったので喜び過ぎたきらいがあった。せっかく当たりを止めたのだから右上手を引くまでは動くべきではなかったと思われる。しかし正代は左が入ってここが勝機とばかり一気に出ていく。だが上体ばかりに力が入って足が出ていない。北勝富士は土俵際、捨て身の突き落としを見せると正代はバッタリ前に落ちた。九分九厘勝った相撲だけに実にもったいないことをした。3敗となったが、ひそかに狙っていただろう初優勝の夢はこれで消えたと言って良いだろう。
 それでもまだ朝乃山と白鵬戦が残されている。先ほど夢は消えたと言ってしまったが、まだ首の皮一枚で夢は残されている。あきらめてはいけません。
 朝乃山は昨日の負けを引きずることなく落ち着きを取り戻し1敗を守った。そして結びに大波乱が起きたのであります。
 押し相撲はひとつ間違えば怖いと言われているが、まさにその通りになってしまった。10日目まで全く危なげなく勝ち進んできた白鵬が大栄翔に敗れる大番狂わせとなった。それも大栄翔の猛烈な押しになすすべなく敗れたのだから場内騒然。私も大興奮。これで優勝争いは振り出しに戻った。
 気を落ち着かせて勝負を振り返ろうか。そろそろ張り差しの出る頃と思ったが白鵬はどうやら右から当たっていたように見えた。左は私の方からは見えない。白鵬の踏み込みはいつもより高いように見えた。顔もわずかに右上に上がる。大栄翔の突き起こしでアゴも上がる。大栄翔が右からいなす。白鵬は残すが体勢は崩れている。今度は苦し紛れに白鵬が左から引きを見せる。この機を待っていたかのように大栄翔は一気に攻め立てる。白鵬は何とか回り込もうとするが大栄翔は逃がしてなるものかとばかり攻め立てる。さすがの白鵬は観念したかのように苦笑いを浮かべ土俵を割った。
 「若いの、よくやるな」と思ったかどうかは分からない。ポンと相手の肩をたたいたのは横綱の余裕なのかもしれない。いい場面であった。そして相撲が面白くなった。
 これで照ノ富士も不気味な存在になった。1敗は白鵬、朝乃山、そして照ノ富士。一応、3敗まで圏内とはいえ、そこまで混乱はしないだろうが、何が起きるか分からないのが勝負事である。少し楽しくなったので何かうまいもんでも食べようか。12日目は放送が休みなので久しぶりに赤ワインでもやるか。肴(さかな)は頂きもののチーズと旭川から送ってもらったジンギスカン鍋にしよう。最近うまい羊が手に入るんです。何だかいつも頂き物ばかりで申し訳ない。
 年寄りは食うしか楽しみがないのです。今日もすごい数の感染者が出ている。くわばら、くわばらです。言うことが古い。(元横綱)
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