学校の熱中症対策、遺族が啓発 予防の徹底を

2020年7月30日 05時00分 (7月30日 05時00分更新)
授業中も窓を開けて換気をしながら、エアコンをつけて熱中症対策に気を配る=愛知県みよし市の中部小学校で

授業中も窓を開けて換気をしながら、エアコンをつけて熱中症対策に気を配る=愛知県みよし市の中部小学校で

  • 授業中も窓を開けて換気をしながら、エアコンをつけて熱中症対策に気を配る=愛知県みよし市の中部小学校で
  • 宮脇勝哉さん
 例年は夏休みにあたる今の時期。今年は多くの小中学校で授業が行われており、熱中症への警戒が強まっている。二十一年前の七月、中学一年だった宮脇健斗さんを部活動中に熱中症で亡くした父親の勝哉さん(62)=兵庫県宝塚市=は「準備の徹底が学校教育を守ることにつながる」と丁寧な対策を求める。(福沢英里)
 健斗さんは一九九九年七月、ラグビー部の朝の練習中、ふらついてグラウンド上に倒れた。その直前に足がけいれんし、顧問の男性教諭に不調を訴えたが、「演技は通用せん」と取り合ってもらえなかった。水場に約一時間、放置され、搬送先の病院で死亡。原因は熱中症による多臓器不全だった。裁判で教諭の過失が認定された。
 教諭は十四年間顧問を務め、ハードな練習内容に口を挟む人は校内にいなかった。勝哉さんは「『多少のけがをしても保護者から苦情は来ない』『今まで同じようにやってきた』という教諭の過信があった」と当時を振り返る。
 予防への意識を高めてもらおうと、気象情報会社が提供していた「熱中症情報」を地元テレビ局に流してもらうよう依頼。他局でも放送するきっかけをつくった。教育現場への啓発リーフレットの作成も文部科学省に働き掛け、全国の幼稚園や小中高校などに二部ずつ配られた。
 熱中症が増える六〜九月、多い年には千五百人以上が命を落とし、子どもが亡くなるケースもある。気象庁と環境省は関東甲信地方の一都八県で、住民に対策を求める「熱中症警戒アラート」を試験的に始めた。
 勝哉さんは今、新型コロナウイルス対策に追われる学校が水分補給など通り一遍の熱中症対策で済ませてしまうのではないか、と懸念。学校でできる対策として、(1)気温と湿度、日差しによって熱中症の危険度を示す暑さ指数(WBGT)の指針を玄関などに掲示(2)症状や対処法を学べる日本スポーツ振興センターの「教材カード」を保健室や教室に張る(3)掲示を基に、児童生徒が暑さで頭痛や不調を感じた時、自分で対策できるよう声かけ−の徹底を提案する。
 元教員として学校現場の事情も知る勝哉さんは「教員は『今までやってきたから大丈夫』という思い込みを捨て、子どものSOSにすぐ対応してほしい。『あの子、おかしい』と周囲の子どもが声を上げられる雰囲気づくりも大事」と話している。

登下校時も工夫

 各地の学校では、水分補給や日傘、冷感グッズ活用などに加え、子どもを守る環境づくりに力を注ぐ。
 注意が必要なのは登下校時。二〇一八年七月に四〇・七度を記録した岐阜県多治見市は、小学校の下校時間となる午後二時半〜三時前後に三五度を上回る場合は下校を見合わせ、教室で気温が下がるのを待つことにしている。
 愛知県みよし市では、歩く距離が長い通学班には教職員や交通指導員が付き添い、保護者や地域の人たちに見守りを依頼。緊急時の避難先となる「子ども110番の家」にも呼び掛け、気分が悪くなった子どもが駆け込めるように手配した。
 一方、教室ではエアコンが頼りだ。コロナ対策で、エアコンをつけながら窓を開ける「窓開け換気」について、空調機器大手ダイキン工業(大阪市)広報グループの重政周之さんは「対角線にある二カ所の窓を開け、空気の通り道をつくると効果的」と話す。

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