おんのう様と狐 いたずら次々、村人ら困り果て

2020年7月29日 05時00分 (7月29日 05時00分更新)

◆しっぽ抜かれ 心を入れ替え

 昔、昔の話です。
 薬師の村(今の浜松市東区薬師町)に、1匹のいたずら狐がすんでいました。
 
 こんもりとした森をねぐらにした狐は、田畑に出掛けて農作物をつまみ食いしたり、村人が川に仕掛けた網から魚を取ったりと、いたずらざんまいです。しまいには、調子に乗った狐が村人の屋敷に入ってくるようになりました。
 村人はあまりにもいたずらが続くので、困り果てていました。
 「狐はお稲荷様の使いというので大切にしたいが、いたずらの度が過ぎる」
 「かわいそうだが、誰か懲らしめてくれないか」
 森の近くに、おんのう様と呼ばれるおばあさんが住んでいました。
 ある夜のことです。おばあさんが夜なべ仕事で糸を紡いでいると、玄関の戸をトントンたたく音が聞こえてきます。
 おばあさんは、夜遅く訪ねて来るのは狐の仕業に違いないと思いました。何度たたかれても知らん顔です。
 「これだけたたいても、おんのう様は気付かないのか。いたずらのしがいがない」
 狐は座敷の方に行きました。雨戸に開いた節穴から中をのぞくと、おばあさんが糸を紡いでいます。
 「この穴からしっぽを出して揺らせば、おんのう様は腰を抜かして驚くぞ」
 狐がしっぽを揺らし始めたその時です。おばあさんは、しっぽをつかむと力いっぱい引っ張りました。
 狐は慌ててしっぽを抜こうとしますが、おばあさんは離してくれません。引っ張り合っているうちに、とうとうしっぽが抜けてしまいました。
 おばあさんは、狐のしっぽを土間に置くと、何事もなかったかのように作業を続けました。
 しっぽの抜けた狐は、自慢のしっぽがなくなったので、ふらふらしてうまく歩けません。しっぽがない姿はいかにも不格好で、どこにも行く気になりません。狐は夜明けを待たずに、おばあさんの家に戻りました。
 「おんのう様、起きてください。二度といたずらはしないので、どうか、しっぽをお返しください」
 おばあさんは、しょげかえった狐にしっぽを渡しながら、狐のいたずらのせいで村人が今までどんなにつらく、いやな思いをしてきたか話しました。
 しっぽを返してもらった狐は心を入れ替え、この日から決していたずらをしなくなったそうです。

<もっと知りたい人へ>
参考文献:児童向け「浜松の伝説・下」渥美実


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