国造ゆず 絶やさない 新たな担い手に阿部さん

2020年7月28日 05時00分 (7月28日 05時03分更新)
ゴルフボール大に育ったユズを見つめる阿部乃里子さん=能美市徳山町で

ゴルフボール大に育ったユズを見つめる阿部乃里子さん=能美市徳山町で

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植樹活動など 「世代交代 今のうちに」


 能美市東部に広がる国造地区の特産品「国造ゆず」は、農薬や化学肥料を使わない天然の果実として人気を集める。農家の高齢化や後継者不足など、中山間地ならではの課題も抱える。そんな中、県外出身の一人の女性が新たな担い手として存在感を高めつつある。(平井剛)
 「今年は裏年に当たるけれど、まずまずの実ができそう」。草木が生い茂る同市徳山町のユズ畑で、ゴルフボール大に育った青いユズの実に目を細めるのは阿部乃里子さん(45)だ。
 阿部さんは仙台市出身。岐阜県高山市の家具製造会社の東京事務所で十年間働いた後、地域おこし協力隊員として二〇一八年七月、能美市に赴任した。農業経験は皆無ながら、農産物の六次産業化や農家見習いの仕事に携わる。
 国造ゆずの栽培に関わったのは昨年三月から。一九八六(昭和六十一)年に国造地区で栽培が始まった当時は四十七軒あったユズ農家が、六軒にまで減少。うち一軒の農家が体調悪化で畑の世話をできなくなり、阿部さんが六アール、三十五本の畑の世話を引き継いだ。
 会社員時代に国造ゆずの生産現場を視察したことはあったが、栽培に携わるのは初めて。最初は先輩農家に教えを請い、木の枝切りや摘果などに精を出した。まじめな仕事ぶりが認められると、さらに別の農家からも四アール、二十四本の畑を任されるようになった。
 昨年は表年だったことも幸いし、地区全体で過去最高の十五トンを収穫できた。ただ、栽培開始当時に植えられた七百本の木も農家同様に高齢化が進んでおり、定期的に植え替えをして世代交代する必要がある。このため地区の六軒のユズ農家が協力して、昨年から植樹活動を始めた。これも阿部さんが働き掛けて、初めて実現させたものだ。
 「苗木が成長し、実が安定的に収穫できるまでには十年かかる。世代交代に必要な期間を今のうちに設けておかないと、いずれ存続の危機が訪れる」と阿部さんは訴える。
 無農薬を強みとした国造ゆずへの引き合いは多い。今年に入ってからも、地元の化粧品メーカーが香り成分を配合したハンドソープを、輪島市の老舗菓子店が果実を丸ごとすりつぶしたジャムを商品化している。阿部さんは「代々の農家が無農薬にこだわり大切に守り育ててきたユズ。絶やしてはならない」と語る。平均年齢八十代の農家に交じって、今日もさっそうと畑作業に精を出す。

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