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大衆に寄り添うサザンの真骨頂見せつけた『無観客ライブ』 その圧倒的パフォーマンスは今後のさまざまな方向性示した

2020年7月23日 22時59分

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無観客とは思えない盛り上がりを見せたサザンオールスターズ

無観客とは思えない盛り上がりを見せたサザンオールスターズ

 サザンオールスターズが42回目のデビュー記念日の6月25日に無観客ライブ「Keep Smilin,~皆さん、ありがとうございます!!~」を有料配信してから約1カ月。今も余韻に浸るファンもいる中、あらためてバンド初の試みを振り返ってみよう。
「よくぞやってくれた」「さすがサザン」。配信終了後、ファンだけでなく音楽業界周辺から称賛の声が上がった。最初の驚きは、横浜アリーナで実施したこと。これまで60回近くライブを行ってきたサザンのいわばホーム。桑田佳祐(64)が、活動自粛によって仕事がなくなってしまったスタッフとともに作り上げたいとの意向もあって立ち上げた企画だけに、オオバコという選択は自然な流れであり、十分な覚悟をうかがわせた。
 8つの大手配信メディア(ファンクラブを含む)と組んだのも話題をさらった。身近なスタッフによると、「会場も配信メディアについても、やるならきっちり打ち上げ花火をあげようぜ、ということ」。最初からスケール感を意識した取り組みだった。
 本番では、カゲマイクのアナウンスが、いつも通りの高揚感をあおった。注意事項となる大きな声での歌唱やかぶり物については、「今回の公演に関しては、ほかのお客さまのご迷惑にはなりません」。
 定刻から遅れること12分。ブルーのライトに浮かび上がったステージにメンバーがおもむろに登場した。1曲目「YOU」から全開のパフォーマンス。40台のカメラは、無観客ならではのアングルで斬新な映像を提供。照明も、客席に多くの器材を仕込んで、まるでメンバーを鼓舞するかのようなおびただしい光の渦を繰り出した。バックに流れる映像も、曲ごとに工夫が施され、いつものツアーと遜色がない。
 「真夏の果実」では、客席に置かれたリストバンドが光った。続く「東京VICTORY」の時には、客席後方に聖火台のセットが出現、本物の火が揺れた。ステージ袖やPA席のスタッフが、曲に合わせてこぶしを突き上げる光景が映し出され、会場とともに画面越しの視聴者との一体感は最高潮に。「シャ・ラ・ラ」やラスト曲「みんなのうた」の時には、過去のライブのファンの映像が流れ、リアルと錯覚するような演出。ショートコントや一部の歌詞を替えたり、おなじみの“ヅラ”もしっかり用意した桑田。ホースでの放水はさすがになかったが、桑田は水鉄砲を手にしてみせた。フィナーレにはダンサーが客席いっぱいに広がり、ゴージャス感がハンパない。最後の最後まで「無観客」とは思えない圧倒的なパフォーマンスで走り抜けた。
 サザンが所属するビクターとはライバル会社の女性プロデューサーは、ご近所さんと視聴。「買い物や食事など事前準備も含めて、お祭り感覚でとてもいい時間を過ごせました」と満足した様子。自分と同じように複数で楽しむ人が想定されたため「新型コロナウイルスの感染者が出なければ」と願っていたという(その後確認されていない)。映像が一部途切れた瞬間はあったが、音切れはなく「相当ご苦労されたのでは」と技術スタッフをねぎらった。
 ファン歴25年以上のラジオ局の女性社員は、「冒頭でアッパーな曲を5曲連続でやるというのは近年まれ。いかに視聴者の気持ちの距離を引き寄せるか、そこに全力投球した」。そして、あたかも観客がいるようにパフォーマンスできたのは、バンドの40年の力だとした上で、「普段のライブを無観客で見せるのではなく、無観客ライブとしての在り方、可能性を最大限に見せつけた」と評価した。
 7月17日のニッポン放送「オールナイトニッポンGOLD」でサザン特集を組んだシンガー・ソングライターの吉田拓郎(74)は、「サザンオールスターズだからやれたっていうのも、どっかあるんじゃないかな」。日本で初めてのコンサートツアーやオールナイトライブなど画期的なイベントを実行してきた先駆者が、頼もしそうに声を弾ませた。
 サザンの初代ディレクター、高垣健さんは「1曲目『YOU』、戸惑ったのはメンバーに見えて実はボクたちパソコン越しの観客でした。今までにない緊張感でしたが、3曲目『希望の轍』からは非日常の興奮がやってきて、あっという間にフィナーレでしたね」。
 社会全体に閉塞(へいそく)感が広がる絶妙なタイミングで実行された無観客ライブ。ファンやスタッフ、医療従事者、エッセンシャルワーカーへの感謝と明日への希望のメッセージを発し、大衆に寄り添うサザンの真骨頂を見せつけたと同時に、さまざまな方向性を示した2020年のトピックスとして記憶される。

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