ピンチの今こそ住民参加 小中学校と地域の連携

2020年7月23日 05時00分 (7月23日 05時00分更新)
生徒に数学を教える高野さん(右)=長野県高森町の高森中学校で

生徒に数学を教える高野さん(右)=長野県高森町の高森中学校で

  • 生徒に数学を教える高野さん(右)=長野県高森町の高森中学校で
 六月下旬の土曜日、長野県高森町の高森中の教室に、部活動を終えた三年生たちが集まってきた。「aとbが二乗になっているかどうかに目を付けよう。じゃあこの式は?」。元教員で町公民館長の高野正延さん(65)が教壇に立ち、因数分解の考え方や計算のこつを伝授した。
 補習を希望する三年生向けの「サタデーパワーアップ教室」。因数分解は本来、中三の五月に習う内容だが、休校により授業で十分な時間が取れなかった。毎回参加している中村千果さんは「部活の後に勉強か、と思っていたけど、分かりやすくて集中できる。できない部分が減ってきてうれしい」。
 毎週土曜日に、一日六こま。国語や英語など五教科を五人の元教員が教え、生徒は受けたい授業を受けられる。学校側から「休校で学習の差が生まれている」と相談を受けた高野さんらが元教員を集め、提案した。どの単元を扱うかは、現役の教員が決めた。
 新型コロナによる休校がきっかけだが、連携がスムーズに進んだ背景にはコミュニティースクール(CS)制度がある。CSは学校長や保護者、地域住民でつくる「学校運営協議会」を置く学校。高森町では二〇一七年から町内すべての小中三校で導入し、住民が学校運営や支援に携わる。CSディレクターを務める高野さんは「まち全体で子どもたちを支えるという発想が浸透してきている」と話す。
 高森南小では、休校が明けた五月後半、地域の有志四人が給食の配膳を手伝った。特に給食に慣れないまま休校になった一年生に対し、感染防止のためだけでなく、盛り付け方の手本を見せるため学校側が依頼した。松岡香代子教頭は「どうしようかなという時に頼れる存在で、ありがたい」と話す。
 文部科学省によると、CSの導入校は増え続けており、二〇一九年五月現在、全国で七千六百一校。ただ特別職の地方公務員として採用される運営委員には責任も伴う。担い手の確保などが課題となり、学校全体に占める割合は21・3%にとどまっている。
 新型コロナウイルスの影響で、感染対策や学習の遅れの対応に追われる学校現場。教員の人手が限られる中で、住民参加の制度を活用して、地域の力を積極的に借りているところも。コロナ禍を契機に、学校と地域の関係性が見直されつつある。 (北村希)

国が「人材バンク」

 文部科学省は五月下旬、学校での感染症対策と学びの両立のため、人員の補充に三百十億円の予算を計上した。教員約三千人、学習を補助する学習指導員約六万人、事務作業などを担うスクールサポートスタッフ約二万人分だ。
 ただ、採用するのは各自治体。人材の確保が難しいことから、国は「学校・子供応援サポーター人材バンク」を立ち上げた。希望者に登録してもらい、都道府県に情報提供している。七月十日現在、計一万九千人が登録しており、教員免許保有者は約二割。愛知県の登録者は約千人で、そのうち実際に採用につながっているのは四十五人という。
 同県清須市では、市内の登録者に市教育委員会と学校長らが面接を行い、消毒作業を手伝うスタッフとして、学生や主婦ら四人を採用。担当者は「学校現場は通常業務と消毒作業に追われ、とても苦しい状況。小中学校で計十二校あるので、まだまだ足りない。かといって誰でもいいというわけではないので…」と葛藤を明かす。教員枠を埋める免許保有者を探すのは、よりハードルが高いという。

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