<Meet STEAM> 睡眠を研究 筑波大教授・柳沢正史さん
2020年7月19日 05時00分 (8月17日 15時40分更新)
人間にとって不可欠な睡眠。そのメカニズムは謎に包まれています。「知らないことを知りたい」という好奇心に導かれ、偶然の発見から睡眠研究の分野に足を踏み入れた筑波大国際統合睡眠医科学研究機構長の柳沢正史教授に話を聞きました。
(聞き手・大沢悠)
◆知らないことへの好奇心で、あさっての患者救う
−どのような研究をしているのでしょうか。
人間は長く起きているとだんだんと眠くなる。睡眠欲求が蓄積し、眠るとそれが解消される。ししおどしに例えると、筒が上を向いている状態が覚醒で、水がたまって下を向くと眠りに落ちる。でも水に当たるものが何かは誰も知らない。その睡眠の根本問題を研究しています。
−睡眠に関心を抱いたのは。
もともとは体内の情報伝達物質に興味を持っていました。オレキシンという物質を見つけ、食欲に関係していると予想した。ところが、オレキシンを作れないマウスを観察すると、ありえないタイミングで寝てしまう脳の疾患、ナルコレプシーにかかっているとわかりました。
オレキシンがないと起きていられないということを偶然発見したのを契機に調べてみると、睡眠の仕組みは未知の分野が多い。好奇心を駆り立てられ、睡眠研究の世界に入りました。
−研究者を目指したのは。
小さい頃から何かを作るのが好きで、小学三年のころから、電子部品を買って回路を作るようになり、高校の自由研究では、パソコンのない時代にコンピューターを組み立てるほど熱中しました。
臨床医だった父親に「生物学がこれから面白くなる」と勧められて医学の道に。高校までの生物は一度も面白いと思わなかったのですが、大学の授業は細胞や分子のレベルで人間の仕組みを学ぶ。知らなかったことばかりで、刺激的でした。
臨床に進むか迷いましたが、自分の居場所は研究かなと。純粋に知らないことを知りたいという気持ちがあった。でも医学部を出て、医者にならずに基礎研究に進むのはごくわずかしかいない。自分に言い訳をするために「あさっての患者を助ける」と標語を作りました。そうして進んだ分野で、自分の研究が不眠症の薬に応用されているのは誇らしいことです。
−専門分野はどのように見つけるのでしょうか。
専門分野は、狙って進むものじゃない。人との出会いの方がずっと大事。必ず自分にとってのメンターに当たる人が出てくる。なんとなく始めた中で、自分の分野が見えてくる。
日本は大学受験で学部を決めなくちゃいけない無謀なシステム。理系と文系をこんなに分けているのは日本だけ。私も文系科目は苦手だったし、嫌いだった。でも文章を書いたり読んだりするのはものすごく大事で、これがなければ研究者はやっていけない。文系といわれる職業でも、これからは理系的、分析的な考え方が必須になります。
やなぎさわ・まさし 1960年、東京生まれ。筑波大医学専門学群卒業。大学院生だった88年、血管を収縮させる物質「エンドセリン」を発見し、後に肺高血圧症の薬に応用された。91〜2014年にアメリカのテキサス大で研究室を主宰。この間の1998年に「オレキシン」を発見し、睡眠の研究を始めた。
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