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「地下水に影響なし」大筋合意 リニア有識者会議

2020年7月17日 05時00分 (12月27日 17時53分更新)
 リニア中央新幹線の南アルプストンネル(静岡市葵区)工事を巡り、国土交通省は十六日、六週間ぶりに有識者会議の第四回会合を開いた。委員の求めに応じJR東海が初めて示した地下水データなどを根拠に、会議は工事が大井川の表流水や中下流域の地下水に「影響はない」とすることで大筋合意した。
 次回の会合は山梨・長野県側に流出した湧水が一定期間、静岡県側に戻せない問題を議論し、「水問題」に対する中間結果の取りまとめに入る。次回日程は未定。中間結果がJRの主張を裏付ける可能性はあるが、実現が困難になっている二〇二七年のリニア開業を後押しするかは、日程的に見通せない。
 JRは、地表や地下の水の動きを科学的にシミュレーションする「水収支解析」に基づき、地下水位がどれだけ下がるか、初めて予測値を示した。予測値によると、リニア完成から二十年後までにトンネル周辺の水位は三百メートル超下がり、近くを流れる沢の流量は最大で七割減少する。一方で、地下水位の減少は工事現場周辺にとどまり、大井川の表流水は減らない。
 複数の委員は地下水位は渇水期にも毎年一定で、表流水と地下水の因果関係は薄いとも指摘。会合後、福岡捷二座長(中央大研究開発機構教授)は「大井川のポテンシャルから、下流の水利用に影響は大きくないという方向になった」と述べた。
 JRの宇野護副社長は「地下水への影響は広い範囲では及ばないということが、議論を通じて共通認識になった」と語った。
 難波喬司副知事は「予測値は実測値とのばらつきが大きく、かなり精度が悪い。地下水位が三百メートル超下がると、生態系への影響が厳しい」と指摘し、「水問題」と並ぶ会議の課題「生物多様性」の議論に影響が及ぶとの認識を示した。
 国交省の有識者会議は膠着(こうちゃく)状態に陥った県とJRの協議を前に進めるため、論点を整理する立場。会議の結果を受け、県とJRは再び協議に入る。 (広田和也)

◆JR新資料で科学的議論

 地下水問題は、JR東海の主張が大筋で認められる流れとなった。委員の求めに応じてJRが新資料を提示したことで、科学的な議論が進んだ形だ。
 この問題は県の有識者会議(地質構造・水資源専門部会)で協議されてきた。文献資料や県のリポートを参考に上流域と中下流域の地下水の連続性を否定することで「影響はない」と主張するJRと、裏付ける実測データの提出を求める県が対立。JRはデータを出さず、議論は膠着した。
 四月に発足した国交省・有識者会議の委員からも同じ意見が相次ぎ、JRは対応を軟化。過去十年で大井川の流量の増減にかかわらず中下流域十五地点の地下水位が一定であることを示す表や、工事着手から二十年にわたって地下水位が低下する範囲を地図上に落とし込んだ資料を公開。議論はようやく前に進んだ。
 国交省の委員は地下水学や水文学など水の専門家が七人中四人を占める。地形の勾配や地下水面の動きなど、多角的な視点を結び合わせ、JRの主張を裏付ける解釈が固まった。 (五十幡将之)

◆知事 21日に林道再視察

 川勝平太知事は、リニア工事現場に通じる林道東俣線(静岡市葵区)を二十一日に再び視察することを決めた。二十二日に自民党・リニア特別委で説明を求められており、結果を反映させる狙いとみられる。
 知事は十日の国土交通省・藤田耕三次官との会談で、六月下旬からの大雨で林道が崩落するなど、現場はJR東海が求めるヤード(作業基地)整備に着手できる状況にないと強調した。 (大杉はるか)

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