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コロナ禍で異彩…鈴木杏が1人芝居「殺意 ストリップショウ」4時間超の作品を2時間に凝縮 ほぼしゃべりっ放し

2020年7月16日 16時51分

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ほぼ2時間、しゃべりっ放しのストリッパー緑川美沙にふんした鈴木杏(細野晋司撮影)

ほぼ2時間、しゃべりっ放しのストリッパー緑川美沙にふんした鈴木杏(細野晋司撮影)

 7月に入って、公演を自粛していた東京都内の劇場が相次いで動き始めた。11日に初日の幕を明けた東京・三軒茶屋のシアタートラムでは、鈴木杏が1人芝居「殺意 ストリップショウ」で気を吐いている。
 1958年に56歳で亡くなった日本を代表する劇作家、三好十郎の作品だ。まともに上演すると4時間ほどかかるという難物を、演出の栗山民也が濃密な約2時間に仕立てた。
 タイトルからおどろおどろしい内容を想像しがちだが、立ち上がってきたのは、1人の女が感情の起伏をあらわにして吐き出す人間の業のようなもの、でありながら思考経路は理知的であり、戦争によって翻弄(ほんろう)された者の恨み言に聞こえる独白に、ぐいぐい引き込まれる。
 劇場内に入ると、舞台には、“出べそ”と称される張り出しのステージがしつらえられていて、そこは「とある高級ナイトクラブ」。ほぼ下着姿(ストリッパーの衣装)のソロダンサー緑川美沙(鈴木)が、最後のステージを終えて、客に今までのお礼を述べたりしながら、おもむろに自分の歩みを語り出す。
 田舎から上京した美沙は、縁あって“真実の進歩的思想家”で社会学者の山田教授宅に住み込む。やがて山田教授の弟・徹男と思い合う仲になるのだが、徹男はほどなく戦地へ。山田教授は、戦時中は軍国主義に迎合する言説を唱え、美沙はもちろん徹男さえ後押しされて出征。あげく、悲惨な体験を経て敗戦を迎える。
 価値観が一変する中で、山田教授は再び左翼に転じて何ら恥じる様子もない。身を落とした美沙は、ひょんなことから、その男の極めて俗な姿を知る。
 じっと息を潜めて山田の動向を追う美沙。殺意に至る心境に、一面の真実が浮かび上がる。さらなる逡巡に、初めからストリッパーだったわけではない女の苦悩が切なく渦巻く。魅力的な肢体(したい)とのギャップが美しく、照明に光る汗がなまめかしい。
 死語に近いと思われる「転向」といった言葉の重みにハッとさせられ、時代と向き合って生きる難しさを感じないわけにはいかない。1950年に発表された作品が、実に鮮烈だ。音楽、照明の効果もあって、コロナ禍で異彩を放つ鈴木の代表作になった。26日まで。

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