<今 教育を考える>高校の国語、どう変わる 国語教育者・村上慎一さん

2020年7月15日 05時00分 (7月15日 05時00分更新)
村上慎一さん

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  • 村上慎一さん
 二〇二二年度から本格実施される高校の新学習指導要領で、国語は「文学国語」や「論理国語」などに分けられ、扱う文章も「文学的」「論理的」「実用的」の三つに分類される。この線引きで国語教育はどう変わるのか。愛知県の中学と高校で教えていた国語教育者の村上慎一さんに聞いた。 (聞き手・大沢悠)
 −「読解力」とはどのような力ですか。
 表現者の意図を正確に読み、自分の言葉に置き換えて解釈する力です。「読む」ことだけに働くわけではなく、「聞く」はもちろん、「話す」「書く」のベースになります。表現者の立場や心情に対する想像力や生じた疑問を自分の頭で考える力が必要。読解とは想像力と思考力の鍛錬です。
 −新学習指導要領では、身に付ける力を明確にするため、論理的な文章と実用的な文章を扱う「論理国語」や、小説や詩などを扱う「文学国語」などの選択科目に分けられます。
 分けて教えるものなのかという疑問はあります。「受験に関係ない」と理系の生徒が文学国語を選択しない可能性もあります。文学は「人の心」を扱う。理系だからと「心」を軽視していいとは思いません。
 教科書にも載っている森鴎外の「舞姫」は、長くなるので扱わない先生も多い。でも、舞姫を読むことで「近代と現代」や「日本と西洋」などの視点が与えられ、それによって読めるようになる論文もある。文学国語と論理国語のどちらかだけに偏らない方がいいと思います。
 −「実用的な文章」では駐車場の契約書や生徒会規約などが出てきます。
 これまでの国語で学んできた読解力は、人生に関わるものでした。「実用的な文章」を読むための読解力は生活のためです。経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)で測られるプレゼンテーション力や交渉力、グラフなどからデータを読み取り、相手を説得する力などです。
 でも、私たちの世代は「実用的な文章」の読み方を習っていませんが、読めますよね。説明文や評論文などの論理的な文章の読解が、そのトレーニングになっていたのだと思います。実用的な文章は、論理的な文章が読めていれば読めるはずです。
 −国語は何のために学ぶのでしょうか。
 国語を学んで得た力は、すぐに役立つものではありません。世の中や出来事を見る視点が変わったり、俯瞰(ふかん)して見られるようになったりする。お金もうけにはならないけれど、人生のためになる。豊かな人生につながるのです。
 −国語教育はどうあるべきなのでしょうか。
 先生が一時間、一方的に話しても生徒たちの読解力がつくわけではない。私が教えていた時は、生徒たちに音読させた後、教科書を伏せて「何が書いてあった?」と聞き、自分の言葉で話してもらった。周りと話し合っていい。縮約、要約をさせる時は、最後に机の上に何も置かないで「何が書いてあったか」を生徒と一緒に振り返る。常に生徒に問い掛け、考えさせる。国語の授業は対話的にしかできません。 
 ◇ 
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた一斉休校を契機に始まったインタビュー企画「今 教育を考える」は、テーマを教育全般に広げ、随時掲載します。

 むらかみ・しんいち 1960年、名古屋市生まれ。名古屋大大学院教育発達科学研究科博士課程修了。国語教諭として愛知県立岡崎高校や西尾高校などに勤務。著書に「なぜ国語を学ぶのか」「読解力を身につける」。現在は名古屋外国語大教授。


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