3年前から全員「在宅」 浜松のエムデザイン

2020年7月9日 05時00分 (7月9日 05時01分更新)
自宅併設の事務所で作業するエムデザインの太田裕之社長。在宅で勤務する全従業員4人が事務所に集まったことは「一度もない」と笑う=浜松市中区で

自宅併設の事務所で作業するエムデザインの太田裕之社長。在宅で勤務する全従業員4人が事務所に集まったことは「一度もない」と笑う=浜松市中区で

  • 自宅併設の事務所で作業するエムデザインの太田裕之社長。在宅で勤務する全従業員4人が事務所に集まったことは「一度もない」と笑う=浜松市中区で
 新型コロナウイルス感染症を機に多くの企業が導入したテレワーク。ホームページ(HP)制作などのエムデザイン(浜松市中区)は、三年前から全従業員を在宅勤務とする制度を導入し、時間や場所にとらわれない働き方を実践している。自分の能力に応じて設定できる時給制を採用するなど賃金体系も工夫しており、従業員の満足度は高い。 (鈴木啓紀)
 「スタッフ四人が事務所に集まったことは一度もないんですよ」。同社の太田裕之社長(41)は笑う。
 自宅併設の事務所に“出勤”する太田社長以外は、それぞれの自宅を「ワークスペース」として働く。新型コロナの感染拡大下でも社屋を閉鎖したり出勤を制限したりする必要がなく、実際、業務にも遅れはなかったという。
 「完全在宅」の制度を始めたのは二〇一七年四月。売り手市場で人材確保に苦労する中、「どこもやっていないことを打ち出したかった」と太田社長は話す。
 賃金体系もユニークだ。社長以下全員が時給制で、金額は個々の従業員が決める仕組みにしている。
 HP制作はデザイナーのほか、ページを見られるようにプログラミングするコーダー、顧客との窓口になるディレクターなど、一つの案件でも業務は多岐にわたる。同社は一人で何役もこなす人材は時給を高く設定できるようにしており、基本給八百九十円に上乗せする形で最大二千六百九十円まで支給する。
 また、売り上げの約半分を給料に充てる方針を従業員が共有。例えば三十万円の案件を一人で担当する場合、十五万円を時給で割った数字が業務に充てられる時間と一目で分かり、完成までの目標が立てやすい。逆に、時間内に終わらない場合は時給が高すぎることになる。結果として従業員は、自分の能力に応じた適切な金額を設定することにつながるという。
 時給は〇・一時間(六分)単位で発生するため、子育て中の従業員は、子どもが寝ている早朝や夜間の隙間の時間も有効に活用できる。在宅勤務で問題になりがちな従業員のコミュニケーション不足を防ぐため、従業員同士の昼食会の実費を毎月支給し、年四回は食事、タクシー代を会社が負担する食事会も開く。
 従業員の評判は上々だ。今年一月に異業種から転職し、在宅で一日に平均五時間ほど働く女性(29)は「自由に働けて、デザインなどの勉強もできる」と歓迎。
 一方で「在宅勤務は自発的に物事をやる力が必要。実力、やる気が試される」とも語る。
 在宅勤務の導入以来、正式採用後の離職者は一人だけという。「新しいスタッフを育てるのはコストがかかる。狙い通りの結果だ」と胸を張る太田社長。「この働き方が広く理解されれば、世の中が変わる」と展望する。

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