稲作水管理に富山発IT 事故防止切り札のスマート農業

2020年7月9日 05時00分 (7月9日 10時42分更新)
遠隔操作で水門の開閉などができる水管理システム「paditch」の状況を見る青木靖浩さん(右)と下村豪徳さん=朝日町横水で

遠隔操作で水門の開閉などができる水管理システム「paditch」の状況を見る青木靖浩さん(右)と下村豪徳さん=朝日町横水で

  • 遠隔操作で水門の開閉などができる水管理システム「paditch」の状況を見る青木靖浩さん(右)と下村豪徳さん=朝日町横水で
  • 水門の開閉を操作するスマホの画面。水温、水位、開閉状況なども確認できる=朝日町横水で

高齢化・人手不足に効果期待


 大雨の大規模災害が今年も各地で続発する中、県内ではこの時期、農業用水への転落事故も多発することから対策が進められている。その切り札の一つとして注目を集めるのがITを駆使したスマート農業。特に県内のベンチャー企業が開発した水田の水管理システムは、高齢化や人手不足対策にも効果が期待される。富山発の技術が開く新時代の農業を取材した。(中島健二)
 朝日町横水の田園地帯。段差がある水田の間の急斜面をつたうように農業用水が流れる。幅は五十センチほどだが水量は多く、流れも速い。米づくりのサンライス青木が管理する水田はここから取水する。
 「黒部川から引かれた水は冷たく、危ない」と同社会長の青木靖浩さん(59)。取水口は車で近づけない場所にあり「(水量管理のために)以前は百メートルも歩かねばならず大変だった」と話しながらスマートフォンの画面を操作すると、モーター音をうならせながら水門が開き、水が流れだした。
 スマホには、水田に設置したセンサーから自動送信されてくる水温や水位も表示されている。それを見ながらの水門開閉操作は自宅にいながらでも可能だ。
 「すごく便利で最高」と評価する青木さんは無線操作の草刈り機や除草剤散布ボートも導入するなど作業のスマート化を急速に進める。「これだと若い人が面白いと言う。魅力づくりになる」とも期待する。
 この遠隔操作による水管理システムは滑川市の農業系ベンチャー企業「笑農和(えのわ)」の下村豪徳(かつのり)社長(43)が二〇一六年に開発。「paditch(パディッチ)」と名付けて改良も重ねた結果、これまでに全国各地で四百基余りが導入されている。
 立山町の実家がコメ農家の下村さんはかつて、製造業のIT化を進める企業のエンジニアだったが、ITの視点で農業を見た時に「テクノロジーが入れば大きく変わる」と考え、一三年に「笑農和」を設立。「稲作を工程別に見ると、水管理が人手不足の時にネックになる」と水管理システムの開発に取り組んだ。
 県内では一八年までの十年間に用水の転落事故が百八十四件も起きるなど水管理の危険な状況が問題化している。「遠隔操作や自動制御にすれば事故は減らせる」と下村さん。従来、複数の田を回るため毎日数時間かかっていた手間が省けるなど大幅な省力化も実現できる。
 最終的には稲作全工程のスマート化を目指している下村さん。「ITで全く新しい次世代の農業をつくっていきたい」と意気込む。
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 この記事は八日夕に放送した富山テレビ放送「中島流!深掘りTOYAMA」との連動企画です。中島流の次回は十五日のライブBBT午後六時台に放送します。(放送日は変更になることもあります)
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