岩に化けた大猿 白倉山の椎茸、何者か盗み食い

2020年7月8日 05時00分 (7月20日 14時47分更新)

◆怒った村人たち 犬と一緒に退治

 昔、昔の話です。
 白倉(今の浜松市天竜区龍山町)の人々は、白倉山の平沢の辺りで、椎茸を育てていました。
 今年も、人里を離れた山奥で、丹精して育ててきた椎茸の収穫が楽しみな季節を迎えました。
 ところが、どうしたことでしょう。ここ数日、「これはうまそうだ。もうすぐ収穫できる」と思う椎茸に限って次々になくなってしまうようになりました。
 「小さな椎茸は残ったままで、大きな物が枯れた様子もない。こんな山奥まで、誰かが盗みに来ることなんて、あるのだろうか」
 「見知らぬ人が山に入ろうとすれば、麓の村で目につく。山の獣が食べるのか」
 被害があまりにもひどくなったので、困り果てた村人は夜通し椎茸を見張ることにしました。
 ある夜のことです。見たこともない風貌の大男が遠くの方に見えました。山を下って来たかと思うと、大きく育った椎茸をもぎ取り始めました。
 「盗っ人を見つけたぞ」
 「やっぱり椎茸は盗まれていたんだ」
 「みんなで捕まえるぞ」
 村人は叫びながら追いかけましたが、大男はどこかに消えてしまいました。
 大男を見失った辺りを捜しても、大きな岩が一つあるだけです。
 「あんなに図体が大きいのに、一瞬で消えるなんて」
 「大男に見えたが、狐か何かが化けたのかもしれん」
 次の日、大男が本当に化け物だったら退治しようと、猟師と犬を連れて山に入りました。
 昨日、大男を見失った大きな岩に着きました。
 「今日は、まだ大男は出た気配はないか」
 村人がそうつぶやいた時、犬が大きな岩に向かって激しく吠えだしました。猟師は犬が暴れだしたので、びっくりして手綱を放しました。犬は、あっという間に岩に飛びかかりました。
 「岩が動いた。大猿だ」
 「大男の正体は、大猿だったんだ」
 岩に化けていた大猿と犬が、取っ組み合いを始めました。犬に加勢しようと銃を構えた猟師は、狙いを定めて大猿を撃ちました。こうして大猿を退治することができました。
 この日から、あれほど被害の多かった椎茸は、二度と盗まれなくなりました。

<もっと知りたい人へ>
参考文献 児童向け「静岡県西部のおもしろい伝説」御手洗清


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