原発で穴を埋めるな 石炭火力休廃止

2020年7月4日 05時00分 (7月4日 05時01分更新)

 脱炭素の流れの中、政府が古い石炭火力発電所をリストラする方針を表明した。だが一方で温室効果ガス排出を抑えた新型の増設や原発再稼働を推進するという。なぜ、そこにこだわり続けるのか。
 昨年暮れに、マドリードで開かれた国連気候変動枠組み条約第二十五回締約国会議(COP25)。小泉進次郎環境相は閣僚級会議の演説で「本日は日本の石炭姿勢について、何も進展は伝えられない」と述べ、国際NGOなどから「ゼロ回答」と批判を浴びた。
 COP25開幕時、国連のグテレス事務総長が「『石炭中毒』をやめなければ、気候変動対策の努力はすべて水泡に帰す」とスピーチしたように、温暖化対策=脱炭素、中でも脱石炭は、今や国際社会の潮流だ。
 フランスは二〇二一年、英国は二五年を目標に、石炭火力を廃止していくことを表明している。石炭火力に多くを依存してきたドイツさえ、三八年までの段階的廃止を法律で決めている。
 対して日本は、主力電源扱いを続けてきた。政府のエネルギー基本計画でも三割近くを石炭火力に頼るとしている。
 G7の中で唯一、石炭火力輸出支援も続けており、このことも批判の的にされてきた。
 今回の方針転換の背景には、経済界の変化もあるだろう。国内の三大メガバンクが、環境保護などを重視する「ESG投資」の観点から、石炭火力新設への融資を原則中止する方針を相次いで打ち出した。
 経団連も二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロをめざして再生可能エネルギーへの転換などを積極的に試みる「チャレンジ・ゼロ」構想を提唱し、主要企業の賛同を集めている。
 ただし、経済産業省の方針は欧州のような石炭火力の「廃止」ではなく「抑制」だ。“真正”脱石炭の姿勢とは言い難い。
 旧式の火力発電所をリストラしながらも、高効率でCO2排出量をある程度抑制可能な新型石炭火力は維持、拡大する方向という。これでは国際社会の批判は収まるまい。
 再生可能エネルギーの普及を図るという一方で、発電段階ではCO2を出さないとされる原発の再稼働も進めていくという。
 原発事故のリスクも、温暖化とは別の脅威である。石炭火力の休廃止を、原発復権の口実にすることもあってはならない。

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