灰縄 年を重ねた母親の愛情と尊さ知る

2020年6月27日 05時00分 (7月20日 14時46分更新)

◆領主様「うば捨山 決して許さぬ」

 年を取って働けなくなった年寄りを山に捨てに行くうば捨山の伝説を聞いたことがありますか。 
 昔、春野の灰縄の村(今の浜松市天竜区春野町)でも、奥山に年寄りを捨てに行く風習があったと伝えられています。
 そんな村に、とても親孝行な息子が住んでいました。親の愛を一身に受けて育った息子は、年を取ったからといって、大切な母親を捨てることは、どうしてもできませんでした。
 息子は、家の中に母親をかくまい、周りの人に気付かれないように注意しながら、一緒に暮らしました。
 ある日のことです。領主が「灰縄を持ってくるように」と村人に命じました。
 「『灰縄』というのは、どんな物だろう」
 「燃えた灰で縄をなうことなんて、できるわけがない」
 村人は、ありとあらゆる方法で灰縄作りに挑戦しましたが、誰も成功しません。
 「このままでは領主様に申し訳が立たない」
 「お仕置きされては大変だ」
 息子は、途方に暮れて家に帰ると、母親に泣きつきました。
 「領主様に灰縄作りを命じられたのに、どうしてもできない。困ったものだ」
 話を聞いていた母親は、息子に藁を持ってこさせると「その藁を何度も叩いた後で、できるだけ固めに縄をなってみな。それを焼けば灰縄ができる」と教えてくれました。
 息子は、大急ぎで灰縄を作り、領主に届けました。
 灰縄を手にした領主は、大喜びです。ほうびを与えながら、あきらめかけていた灰縄がどうしてできたのか、息子に尋ねました。
 息子は意を決して、うば捨ての掟を破って一緒に暮らしている母親に教えてもらったことを話しました。
 領主は深くうなずき、お触れを出しました。
 「年を重ねた者に教わる尊さを思い知らされた。まだまだ学びたいことはたくさんある。今後、年老いた者を山に捨てに行くことは、決して許さない」

<もっと知りたい人へ>
参考文献:「ふるさと春野の伝説」春野町教育委員会

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