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リニア 水野和夫・法政大教授に聞く

2020年6月23日 05時00分 (12月27日 19時06分更新)

◆経済成長見込めず不要

水野和夫法政大教授

 東京−名古屋間を四十分、東京−大阪間を六十七分で結ぶリニア中央新幹線。金利ゼロ時代に成長を追うことに否定的で、資本主義の終焉(しゅうえん)を問うてきた経済学者、水野和夫法政大教授(66)の目に、どう映るのか。新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界的な経済停滞に直面する今、その考えを聞いた。 (聞き手・大杉はるか)
 −リニアは安倍政権の成長戦略の一環だ。
 「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」というアベノミクスは大失敗だ。もとから成長戦略はつくれない状態だった。事実上のゼロ金利は一九九五年から始まり、債券市場は「国内に優良な投資先はない」というメッセージを送っている。それを無視し「成長」をまるで宗教のように信じている。成長ですべての問題を隠せると。だが成長はもうない。成長戦略というおまじないに気付かない人が、「夢をもう一度」と頑張っている。
 −成長を追い求めてはいけない。
 食品、衣料品、住宅など供給力は余っている。作っては捨てている状態。エネルギーを無駄に消費することが温暖化を招く。無駄なことはやめるべきだということ。日本はすでに豊か。貧しくなれというわけではない。 
 −リニアの必要性をどう考えるか。
 二〇〇〇年代初めに(英仏が共同開発し、〇〇年に墜落事故を起こした)超音速旅客機コンコルドが運航停止となった。「より速く」という価値観を求める時代が終わった象徴だ。リニアにより東京−名古屋−大阪を結び、(人、モノ、金を集めて国全体の成長につなげる)スーパーメガリージョン(巨大都市圏)を形成するという考え方は時代遅れ。人口二百万〜三百万人単位で地域を分散させ、工業や農業、エネルギーも各経済圏で完結、自立させるべきだ。
 −新型コロナは大都市での感染が目立った。
 米国のスーパーメガリージョンはワシントン−ニューヨーク−ボストン。ニューヨークの新型コロナ被害は深刻だった。二十一世紀になりグローバル化が感染症を拡大している。「より速く」の弊害だ。外出自粛が求められ、テレワークも普及する中で、無駄な出張の見直しも進むだろう。
 −「より速く」とは。
 利益の追求だ。人より速く得ることが利益獲得の最大の方法になっている。東海道新幹線は既に、「企業戦士」を家畜のように運ぶ使命で、東京という巨大都市をつくった。
 −利益を追求するのが企業の使命では。
 株主の発言権が強すぎる。経営者が「わが社はもうけなくていい。利益は十分だ」と言った瞬間、解任される。だから、すれすれのことをしないともうけられない。会社は株主だけでなく、社員ら利害関係者全員のものだ。にもかかわらず、今回のコロナでも、企業を支えてきた派遣社員の雇い止めが見られた。
 −リニアの静岡工区は県が同意せず、いまだ着工していない。
 川勝平太知事がせっかく止めてくれている。ここで突っ走れば、後世になって誰も乗らないものを造ったということになるだろう。

 みずの・かずお 1953年、愛知県生まれ。80年、早大院経済学研究科修了。証券会社を経て2010年、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、11年内閣官房内閣審議官(国家戦略室)。著書に「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」「資本主義の終焉と歴史の危機」など。

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