【石川】マスク越し 会話苦慮 難聴者や、ろう者

2020年6月13日 05時00分 (6月22日 12時47分更新)
「筆談での対応は助かる」と、中川英昭さん(右)や坂本美智子さん(左)と手話を交えて話す村井和美さん=石川県白山市博労で

「筆談での対応は助かる」と、中川英昭さん(右)や坂本美智子さん(左)と手話を交えて話す村井和美さん=石川県白山市博労で

  • 「筆談での対応は助かる」と、中川英昭さん(右)や坂本美智子さん(左)と手話を交えて話す村井和美さん=石川県白山市博労で
  • 筆談での会話を依頼する「耳マーク」。白山市ではキャラクターが入ったオリジナルシールがある

口の動き読めず 筆談やアプリ 助けに


 新型コロナウイルスの感染防止のため外出する際にはマスクの着用が求められる中で、口の動きを頼りに会話をするのが難聴者やろう者。会話の内容のほとんどを唇の動きから予測するという人もいて、マスクで口の動きが読めず意思疎通がしづらいとの声を上げている。筆談、音声を文字で示すスマートフォンの音声認識アプリを使うといった配慮が求められている。(都沙羅)
 難聴の障害がある石川県白山市の会社員村井和美さん(59)は唇の動きを読み取り、口の形と音声で言葉を表す「口話」を使っている。コンビニで会計中のこと。店員が自分に向かって何か話した気がしたが、マスクで口の動きが読めない上、飛沫(ひまつ)防止用のビニールカーテンで音が遮られる。
 後ろにはレジを待つ人の列。「たぶん、レジ袋かポイントカードのことだろう」。そう想像し、よく分からないまま首を縦に振り、やり過ごしたという。村井さんは「断片的に聞こえた単語で会話の内容を推測しているが、あくまで想像でしかない」と語る。
 聴覚障害者は手話だけでなく、音や相手の表情を手掛かりに会話する。手話以外で最も頼りにするのが唇の動き。村井さんの場合は「マスクで口元が見にくい上、音も聞きづらく不便。どれだけ顔を近づけても分からない時もある」と話す。「相手に説明しづらく、感染リスクを考えると、マスクを外してとはとても言えない」と打ち明ける。
 国が示す「新しい生活様式」でも外出時などにはマスクの着用が求められているが、難聴者やろう者の実情は「想定外」だ。白山市聴覚障害者協会会長の中川英昭さん(40)は「会話する人が紙に書いて対応してくれた時は本当に安心する」と語る。文字を書くことを敬遠する人もいるが、スマホの音声認識アプリで文字に示したり、メモ機能で文字を打ったりしてくれるだけでも助かるという。
 耳が不自由なことを表す全日本難聴者・中途失聴者団体連合会のシンボルマーク「耳マーク」もある。難聴の坂本美智子さん(68)=同市=は預金通帳や病院のカルテなどにこのマークを貼り、筆談やアプリでの会話を頼んでいる。
 ただ、マークは十分に普及しておらず、気付いても対応できる人は少ないという。村井さんは「役所や病院で、マークを提示したらすぐに紙とペンを用意してくれると助かる。書きながら会話することへのハードルが低くなれば」と話す。

聴覚障害に理解を

 一般財団法人全日本ろうあ連盟(東京都)の倉野直紀理事の話 筆記対応が可能かどうかは、聴覚障害に対する理解の有無による。近年は障害者をとりまく法や教育の整備も進んだ。それでも筆談に対し抵抗感を持つ健常者はまだいる。
 ただ、コロナ禍ゆえに聴覚障害者への対応はすべて筆談が望ましいとも限らない。聴覚障害者のコミュニケーション方法はさまざまで、手話言語が必要な高齢ろう者などは筆談対応が難しい人もいる。当事者同士の相談が大切だ。

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