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【石川】町家ゲストハウス…限界 外国人客激減、経営困難に

2020年6月13日 05時00分 (6月13日 10時41分更新)
武田逸兵さんが営んでいたゲストハウス。経営を「こみんぐる」に委託し、新たに「Casaya旅音」としてスタートした=金沢市安江町で

武田逸兵さんが営んでいたゲストハウス。経営を「こみんぐる」に委託し、新たに「Casaya旅音」としてスタートした=金沢市安江町で

金沢魅力の景観 姿消す不安


 二〇一五年の北陸新幹線開業後に金沢市内で急増したゲストハウス。新型コロナウイルス感染拡大の影響で経営権を手放すオーナーが出てきた。町家を改装し事業を始めたが、競争激化で経営体力を奪われていた事業者も多く、町家のゲストハウスが姿を消す懸念もされている。
 「二店舗目を開こうかと考えていた矢先にコロナの影響が直撃した」。自らのゲストハウスの経営権を手放す決意をした武田逸兵さん(33)が語る。新幹線開業後の旅行客の増加をビジネス好機ととらえ、曽祖父が営んでいた和傘などを扱う築百年の金沢町家を改修。一六年十月に「旅の宿かさや」としてオープンした。
 金沢駅やひがし茶屋街などに近く、大手旅行サイトでは高評価がつく人気の宿に。宿泊客の七割が訪日外国人で、平均稼働率は七割ほどを保って順調だった。
 今年二月以降は、新型コロナの影響でキャンセルが相次ぎ、四月に予約がなくなった。「うちみたいな外国人旅行客相手の宿は、いつまで待てば以前のように戻るのか、想像がつかない」。現金収入が途絶え、考えたのは経営委託だった。五月になり、金沢市内でゲストハウスを手掛けている「こみんぐる」が運営を引き受けた。
 こみんぐる取締役の林俊伍さん(34)は「金沢の事業者が競争に疲れ、手を引きたいと、昨年末に二件の相談があった」と明かす。市内のゲストハウスを含む簡易宿所は二百五十軒を超す。金沢駅周辺、ひがし茶屋街、野町周辺では数百メートル内にいくつも宿があり、客の奪い合いが続いていた。新型コロナの影響が重なり、宿泊施設の身売りが増える可能性もある。
 全国的にも宿泊施設の売却が進む。事業承継支援のトランビ(東京都港区)が運営するM&A仲介サイトには、各地の民泊やホテルから施設の買い手を募る情報がずらりと並ぶ。
 五月中旬時点でサイトに登録されている売却依頼件数は、ゲストハウスを含む簡易宿所でみると昨年秋時点の五倍。担当者は「新型コロナによる経営悪化を理由とした案件は徐々に増えている」と明かす。
 金沢は古い町家を改修したゲストハウスが多い。林さんは「県外の事業者が買い取った後、景気が落ち込んだときに町家を壊して更地にして売ってしまう可能性もある。金沢の魅力の一つがなくなってしまわないか心配だ」と述べた。(蓮野亜耶)

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