いかにも新谷仁美らしい…「走るのが嫌い」なハーフ日本記録保持者が『引きこもり』脱却に至ったきっかけ

2020年6月9日 22時34分

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練習する新谷仁美

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「体がだらしなくなったから、そろそろ動かなきゃ」

 陸上の女子ハーフマラソン日本記録(1時間6分38秒)保持者の新谷仁美(32)=積水化学=が9日、東京都内で本紙のインタビューに応じた。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言解除を受け、このほど本格的な練習を再開。現在の心境、1年延期となった東京五輪への思いなどを語った。
 久しぶりのトラック、思い切り走れる環境。「走るのが嫌い」と公言する新谷だけに「相変わらずきついなと思った。何がいいのか分からない。どこで何をやろうと私は変わらない」と感傷的になることはない。それでも自然と声は弾む。「トラックや芝生、ロードと使い分けて走った方がしっかり体はつくれるなと、改めて感じた」。走ること、陸上競技を仕事として捉えるからこそ、体と向き合い走ることで得られる反応がまず口をついて出た。
 緊急事態宣言と前後して4月から5月中旬までは「引きこもっていた。ジョグもせず、走りもせず、たまに補強運動をするぐらいで本当にオフシーズンだった」と明かす。犬の小太郎、猫の武蔵という2匹のペットと過ごす日々。「合宿とかで長期間家を空けることが多かったので、彼らと一緒にいられてよかった」と、自身なりのステイホームを振り返る。
 本来なら4月下旬に米国で1万メートルの日本記録(30分48秒89)更新に挑戦し、5月の日本選手権で東京五輪の1万メートル代表を手にしている予定だった。全てが白紙になっても、目標を失ったり、落ち込んだりするような状況に陥ることはなかった。
 「思うような練習ができなくても、試合が決まっていないし、世界的にできないなら仕方ない。自分が走れないなら自分の責任だけど、今回は違う」
 練習を再開したきっかけは「体がだらしなくなったから、そろそろ動かなきゃという気持ち」と、あえて競技と結び付けることはしなかった。ただ、いまだに先行きが不透明な状況だからこそ、どのようにモチベーションを持ち、保ち、上げていくのかと悩むアスリートへの一つの示唆になればとも思っている。
 「女性だったら美ボディーにしたいとか、久しぶりに着た私服が合っていないとか身近なことでいいと思う」
 2013年の世界選手権を最後に一度は引退し、競技会に復帰したのは18年。5年近いブランクを経験しながらも世界選手権出場、ハーフマラソン日本記録にまで至った。だからこそ「ブランクや故障で走れない人たちにも刺激になればいいし、4年、5年のブランクがあっても、一般人で全く走れていなくても、返り咲くことはできるんだと教えたい」とも呼び掛ける。
 当面は12月に予定されている日本選手権が目標となるが「みんなが練習できるようになったので、時間が空いたら空いた分だけ、勝った人が本当に強いという勝負になる。今までにない日本選手権になる」と気を引き締める。そして、その先の東京五輪。「出る試合で全て結果を出すことが仕事」と特別視することはないが、「世界で戦うなら、さらに上を目指さなきゃいけない。やるからにはメダルという結果を伝えたい」と、成長した姿で挑むつもりでいる。
 ▼新谷仁美(にいや・ひとみ)1988(昭和63)年2月26日生まれ、岡山県総社市(旧山手村)出身の32歳。166センチ、43キロ。岡山・興譲館高では全国高校駅伝1区で3年連続区間賞を獲得し、3年時には初優勝に貢献。2012年ロンドン五輪5000メートル、1万メートル代表、13年世界選手権1万メートル5位入賞。今年1月にハーフマラソンで日本新記録を樹立。

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