「建国」名目詐欺 怪事件をたどる〔1〕 自称「王族の末裔」 壮大な物語誇らしげに 

2020年6月9日 05時00分 (6月9日 09時38分更新)
「王族の末裔」を自称した王見禎宏被告=2019年2月8日、福井署で

「王族の末裔」を自称した王見禎宏被告=2019年2月8日、福井署で

  • 「王族の末裔」を自称した王見禎宏被告=2019年2月8日、福井署で

 「数十兆円分の海外資産を回収して新しい国を建国する。支援すれば一・五倍にして返す」−。荒唐無稽な投資話で三十億円超を集めたとされる「建国」詐欺事件の裁判が、福井地裁で続いている。県内でも被害が広がった怪事件を、法廷取材をもとにひもとく。
 「(天皇が継承する三種の神器の)保管管理名義人が私なんです」「二十世紀にない国をつくっておかないといけないんです」
 福井地裁の大法廷で二月、王見禎宏(おうみさだひろ)被告(67)=住所不定=がとうとうと訴えた。「王族の末裔(まつえい)」である自分がブライトン王国を建国するために奮闘してきたという半生を誇らしげに語った。
 王見被告と五百旗頭(いおきべ)正男被告(71)=東京都文京区目白台一=らの組織は、この建国の物語を信じ込ませることによって約十七年間にわたり、全国で少なくとも三十二億円を集めたとされる。支援者らが今なお信じているという「壮大な物語」とは−。
 ◇ 
 時は江戸時代末期。明治天皇の父に当たる孝明天皇は、欧米列強による搾取に備えて「三種の神器」や資産をバチカン市国に隠すことにした。中国地方の王見被告の祖先に実行をひそかに命じ、王見姓を与えた。
 時代は流れ、王見一族は暗殺などで存在を抹消されたとみられた。だが、ひそかに家系をつないだ王見禎宏被告は、バチカン市国にある資産を回収するために同志を集めることにした。
 資産を日本で運用しようとしても国の借金と相殺されるため、新しい国をつくる必要があった。目を付けたのが英国南東部の都市ブライトン。まずはここに信託統治領をつくり、支援金を使って「ブライトン銀行」を設立して資産を運用する。ついに王見被告は元首となり、米ドルに代わる基軸通貨を発行して金本位制を復活させ、世界平和と環境保護を実現する−。
 ◇ 
 孝明天皇やブライトンという都市が実在すること以外は史実と異なっている。この「物語」の多くは、王見被告自身が若い頃に想像したものとみられる。
 検察側の主張によると、王見被告は、広島県の実家で父親から「孝明天皇から名字を賜った」という言い伝えを聞き、自分の家系が特別だと思うようになった。さらに、漢字を横に並べると「現」になる名字にも深い意味を見いだし、自分が「王族の末裔」だと確信していった。
 皇学館大(三重県)で歴史を学び、日本刀や骨董(こっとう)品、不動産関連の仕事をへて四十歳ごろに上京。一九九六(平成八)年、投資話を通じて、五百旗頭被告と出会うことになる。
(この企画は梶山佑が担当します)

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