<学校の部活動>前編 部員も顧問も楽しむには?

2020年6月7日 05時00分 (6月8日 10時52分更新)
 技を磨いたり、友情を育んだりして、多くの中高生が打ち込む部活動。厳しすぎる指導や顧問の先生の長時間労働が問題にもなっています。新型コロナウイルスの感染拡大で、練習の成果を発揮する舞台が失われる事態に見舞われた今、部活動の望ましい姿について、考えてみませんか。(諏訪慧)

技術や友情育む

 全国高校野球選手権大会と地方大会の中止が決まった五月下旬。インターネットに書き込みがあふれた。「せめて最後の思い出づくりはさせてあげてほしい」「悔しいのは球児だけじゃない」−。
 インターハイ(全国高校総合体育大会)や全国中学校体育大会、全日本吹奏楽コンクールなども中止が決定。「三年生がかわいそう」と同情の声が相次ぐのは、「最後の大会」の重みを多くの人が共有している証しといえる。
 最も悔しい思いをしているのは、当の生徒たち。愛知県の高校でハンドボール部主将を務めた三年の女子生徒は「地区大会も中止になり、三月から活動できないまま引退。努力の成果を発揮する場がなく、やり切れない」と嘆く。
 大会は進学や就職の足がかりにもなるため、萩生田光一文部科学相は「三年生が活躍できる場を確保することが望ましい」と表明。各地で代わりの大会が検討されている。
 練習を重ね、技術を磨く。達成感や悔しさを仲間と分かち合う。そんな「教育的効果」を期待される部活動だが、負の側面もある。

体罰など問題に

 二〇一二年には大阪府の高校バスケットボール部の顧問だった男性から体罰を受けた主将が自殺する事件が発生。翌年には強豪で知られる愛知県の高校駅伝部でも体罰が明らかになった。
 指導の行き過ぎが問題になる「ブラック部活」の例は、後を絶たない。柔道部などでの活動中の事故死や、猛暑の中で練習を続けた生徒が熱中症で命を落とした事例も複数、報告されている。
 部活は学校教育の一環だが、教育課程には含まれず、学習指導要領は「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と位置付ける。だが、スポーツ庁の調査によると、中学生の九割以上、高校生の八割以上が加入。事実上の強制加入で、長時間の練習を強いられることに苦痛を感じる生徒も少なくない。
 背景には、「生徒のため」と信じて、休みを返上して指導する顧問の存在もある。一方で、同じ調査で、中学の運動部顧問の半数以上が、「忙しくて思うように指導できない」「心身の疲労・休息不足」と悩みを回答するなど、教員側の負担にもなっている。

時間や休み設定…進む見直し

 部活動の「やり過ぎ」の問題を受けて、スポーツ庁は2018年、週2日以上の休養日の設定や、平日の活動は長くて2時間程度、休日は3時間程度とする運動部向けのガイドラインを策定した。文化庁も吹奏楽、演劇などの文化部に対して同じ内容の指針を公表。都道府県や市町村に具体的な取り組みを求めた。
 国より踏み込んだ改革をする自治体もある。長野県は朝の練習について、準備運動の時間を十分に確保できず、けがの恐れが高まるとして、「原則、行わない」と中学校向けに通知。愛知県豊田市も朝練の原則廃止のほか、週に平日のうち2日と土曜、日曜のいずれかの計3日を休養日に充てる。
 自主的であるはずの活動が苦痛となり、教員の熱血指導がときにひずみを生む現実を前に、見直しが進む。どんな部活動なら楽しめるか、考えてみよう。

用語チェック

 ブラック部活 意思に反する入部や練習の強制、長時間の拘束、顧問による人格を否定するような暴言や体罰などが横行する部活。体力や根性を養うという理由で、多量の食事や炎天下での練習を強制する例もある。教員が顧問になることを強いられたり、残業代なしで長時間の指導をさせられたりして、心身ともに疲弊してしまうような部活を指すこともある。


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