投球の“シュート成分”が平均以上…中日・吉見の新境地『フロントドア』とは 自分を知り自分を変える
2020年6月5日 12時17分
渋谷真コラム・龍の背に乗って
◇4日 練習試合 ヤクルト 2ー2 中日(神宮)
カウント2―2からの5球目。体に向かってくる136キロを、坂口は本能で避けた。そこから曲がる。敷田球審は独特の卍(まんじ)ポーズで見逃し三振をコールした。
「(左打者に)インコースは入ってくる球だけじゃないっていうことを植え付けたくて練習してきました」
吉見が投げた会心のシュート。内角へのボールゾーンからストライクに切れ込む球を、フロントドアという。これが吉見の新境地。はるか昔のような気がするが、彼は沖縄キャンプ中に大胆な決断をした。投手板の踏む位置を、三塁側から一塁側に変えたのだ。
「どこへ投げるか」だけでなく「どこから投げるか」。当時は開幕まで1カ月。時間がないのに変革に動いた根拠は、精密分析機器の目だった。「ラプソード」により、吉見の球のシュート成分が平均値より高いことが判明。自分の特徴を生かすために、自分を変えた。昨季、左打者の被打率4割4厘(右打者は2割4分3厘)という数字も背中を押した。
「違和感なくできています。もう後がないというか、変化を恐れず、うまく対応できているのかなと思います」
3イニングを3安打1失点。坂口を仕留めた直後の山田哲には、ストレートを左翼席まで運ばれた。シュート2球で追い込んでの3球勝負。風に乗り、狭い神宮ならではの本塁打だが、吉見にはそれさえ収穫だった。
「その前の球が良すぎて、インハイに投げようと思ったら打たれました。改めてですが、ストレートだけでは通用しない。強打者に引導を渡されてよかった。すがすがしいです」
吉見を支えてきたのは緩急、強弱、出し入れ、駆け引き…。打者との勝負を「支配したい」と話す右腕に、どうやら新しい引き出しができたようだ。
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