利用減経営を直撃 苦境にあえぐ通所介護施設 感染警戒「緊張感抜けない」

2020年5月30日 05時00分 (5月30日 05時03分更新)

感染予防のため、リハビリ器具などを丁寧に消毒するスタッフ=金沢市平和町の健生クリニックで


 「通所施設に来ることで生活が成り立っているお年寄りがいる。そう思うと、休業という判断はできなかった」。通所介護サービスを提供する健生クリニック(金沢市)の普照(ふしょう)明典事務長(57)が語る。しかし、感染予防で、利用者に来所の回数を減らしてもらっているため、経営は火の車だ。(蓮野亜耶)
 「四月は真っ赤っか。五月はもっとひどい」。四月は利用者の来所回数は前年比一割減。五月は三割減を見込む。これまでは赤字が出ると、系列の病院の黒字で埋め合わせてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で病院の受診控えも増えたため、今回はカバーできないかもしれない。国から補償もない。
 一方で、お年寄りと接する理学療法士の神林裕一さん(34)は「もし利用者に感染させてしまったらと考えると、二十四時間、緊張感が抜けない」と漏らす。富山県の老人保健施設で集団感染が発生したこともあり、なおさらだ。
 さらに、人手不足も心理的負担を増やした。健生クリニックのスタッフは八人。二人休むと運営できなくなる。四月末に一人休んだ。同時期に、もう一人も発熱したが三七・四度に満たなかったこともあり、出勤した。「人数的にも精神的にもぎりぎりでやっている」と神林さんが明かす。
 現在、利用者に来所回数を減らしてもらう代わりに、利用者宅に職員が出向き、一時間程度のリハビリなどをしている。だが、施設と同じとはいかない。慣れない利用者宅の風呂場での入浴介助はけがをさせないか、気が張る。運動する場所が狭い自宅ではリハビリ内容も限られる。
 利用回数を減らしたことで高齢者の生活リズムが崩れ、昼夜逆転の生活になってしまった、筋力が低下して自宅で転倒した、などの報告が相次ぐ。認知症が進んでしまった人もいるという。神林さんは「本来は、介護は体を密着させることが必要だが、感染リスクの低い介護法を見つけていかないと」と頭を悩ませる。
 普照さんはスタッフらの頑張りに目を細めながらも「国の補償がない中、コロナが収束後に通所施設が生き残れるのか」と危ぶむ。「介護施設は社会インフラの一つだということを国はしっかり認識してほしい」と話した。

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