重症者数 国には報告 石川県、会見で「答えられない」

2020年5月29日 05時00分 (5月29日 10時29分更新)

新型コロナ「調査、把握せず」と説明



 新型コロナウイルスの重症者数について、記者会見などで「調査していない」と説明していた石川県が、一方で厚生労働省には人数を報告していたことが、政府の文書から分かった。重症者数は、県内の感染状況と医療提供体制が逼迫(ひっぱく)しているかを知る上で重要な情報だが、県は会見で事実と異なる説明を繰り返していた。(辻渕智之)
 厚労省は四月二十六日に都道府県へ出した調査依頼の事務連絡で、重症者を「集中治療室(ICU)等での管理、人工呼吸器管理または体外式心肺補助(ECMO)による管理が必要な患者」と定義。これに沿う形で、石川県は重症者数を四月二十八日時点で七人、五月七日時点で六人と厚労省に報告していた。政府の対策専門家会議の資料に掲載されている。
 一方で、北野喜樹・県健康福祉部長は四月三十日の記者会見で「入院時に重症だったのは六人。その方の今の状況や、軽症や中等症で入院された方の今の状況は調査していないので答えられない」と回答。五月三日の会見でも「いま現在の個々の患者の症状は把握していないので答えられない」と、記者が質問しても人数を公表しなかった。
 本紙は八日までに県健康福祉部へ個別に複数回、取材した。対応した複数の担当者は「日々刻々と変わる数字を収集する必要はない」「公表が感染者の減少に資するとは考えていない」などと答え、調査していないと強調した。このため、本紙は九日付朝刊一面で「重症患者数 石川県は把握せず」との記事を掲載。併せて、重症者数を公表していないのは、当時の全国十三の特定警戒都道府県のうち、石川のみと伝えた。
 本紙報道後の十一日、県は記者会見で重症者数を六人と初めて公表。十四日には感染状況を継続監視する指標の一つとして、重症者数に基づく「重症患者用病床使用率」を発表した。谷本正憲知事はこの日の会見で「一番多いときで八人でした」と初めて重症者数に言及した。
 重症者数とは別に、重症者病床数についても、県は厚労省の調査依頼を受けて、今月一日と八日時点の数を厚労省に報告した。ところが十二日の記者会見で北野部長は「(重症者病床という)国の定義もない」と公表しなかった。
 北野部長は二十八日の本紙の取材に「私は記者会見で『すべての患者の症状やその変化を把握しているわけではない』と一貫して答えてきたが、重症者数を把握してないとは言っていない」と反論。さらに「(県による入院調整などのために)必要な部分はしっかり把握してきた」と強調したが、会見で公表しなかった理由は明言しなかった。
◇河村・金大講師の話 「情報出さず 対応お粗末」
 東北大情報科学研究科准教授で、金沢大講師の河村和徳氏(政治学)の話 今回のコロナ対応では地方の現場で情報を集めて発信し、そのエビデンス(証拠)に基づいた政策形成が求められ、大阪府などは評価された。石川県は情報を知りたい県民に向き合わず、非常時の対応としてお粗末だったといえる。内部で情報の扱いに混乱したのか、マニュアルがなかったのか。
 不都合な情報は隠すのかと思われてしまうと、県民に自粛や休業要請をしても説得力がなくなる。危機管理上の情報をきちんと提供しないと、観光立県として県外から客を呼び戻すのにも足かせになりかねない。

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