中日文化賞 名古屋工業大教授 神取秀樹氏

2020年5月3日 11時15分 (5月28日 16時02分更新)

光遺伝学ツールであるロドプシンの研究 脳科学の前進に寄与

名古屋工業大教授 神取秀樹氏

 目の中で光の刺激を受け取るタンパク質「ロドプシン」を長年研究し、脳の働きの解明に役立つ技術「光遺伝学」の発展にも貢献してきた。「研究を辞めようかと悩んでいた時に受け入れてくれた大学の皆さんや、一緒に研究してきた学生が喜んでくれると思うと、うれしく光栄」と語る。
 愛知県みよし市の福谷(うきがい)寺の跡取りとして生まれた。岡崎北高から京都大へ。人の網膜にもあって、微生物も持つロドプシンの実験を大学院生の時に始めた。心掛けてきたのは、プラス思考。「研究はほとんどが失敗だが、たまに未知の結果に出合えてワクワクする」。赤外線を使った独自の測定装置を使い、ロドプシン内で水素イオンが流れる際の水分子の変化を解明した。
 2001年、寺を守る親の病で地元に帰ることになり、苦労の末に名工大で助教授になった。その後、好機が訪れた。ロドプシンを使って脳の細胞の働きを光で制御して調べる光遺伝学が開発されると、長年の研究の蓄積を生かし、ナトリウムイオンを細胞外に流すロドプシンを発見。水素イオンを細胞内に流す「ポンプ」をつくるなど、光遺伝学に欠かせない「ツール」を次々世に出した。
 光遺伝学は今、認知症から記憶、睡眠の仕組みまで、脳に関わるほぼすべての研究で使われる技術に。「100年後の国民に還元できる基礎研究を目指してきたが、現在にも役立てたかな」。春には特殊なロドプシンを使って失明者の視覚を再生する計画も始まった。
 平日は研究者で、週末は住職。そんな多忙な日々を支える妻麗子さんも受賞を喜んだという。みよし市在住。59歳。 (社会部・芦原千晶)

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