中日文化賞 東京大卓越教授・分子科学研究所卓越教授 藤田誠氏

2020年5月3日 11時02分 (5月28日 11時08分更新)

自己集合分子システムの創出と応用 「結晶法」世界が驚嘆

東京大卓越教授・分子科学研究所卓越教授 藤田誠氏

 顕微鏡でも見えない小さな分子をブロックのピースのように使って、カプセルや棚を組み上げる。「自己組織化」という化学の新分野を切り開いた。
 DNAが二重らせん構造を作るように、化合物が自発的に集まって機能を持った構造を作ることを「自己組織化」と呼ぶ。1990年に、自己組織化を人工的に起こして金属と有機分子を正方形に組み上げ、化学の新しい方向を示した。その後も、格子やボール状のかごのような構造を作り、内部にタンパク質をとらえたりするなど、研究をリードしてきた。
 2013年に、分子の構造を効率よく分析する「結晶スポンジ法」を発表して世界を驚かせた。自己組織化でジャングルジムのような格子を作り、調べたい分子をスポンジのように格子に吸わせる方法。吸われた分子は整理棚に収まるように規則正しく並ぶ。そこへエックス線を当てれば分子の形を精密に分析できる。
 エックス線で分子を調べるには、分子を結晶にして整然と並べる必要があった。だが結晶づくりは難しく、温度や濃度など多くの条件を変えて何千回、何万回と試す必要がある。結局できずに諦めることも。100年前から科学者を悩ませてきた問題を解決した。
 自己組織化の研究が大きく進んだのは1997年からの分子科学研究所(愛知県岡崎市)時代。「若手が独立して研究できて予算ももらえた。追随する海外のグループを突き放せた」という。2018年からは同研究所の卓越教授を務めている。
 「結晶スポンジ法は応用の枝のひとつ」。自己組織化を利用して、珍しい分子を作るなど、アイデアは尽きない。東京都出身、千葉市在住。62歳。 (東京科学部・永井理)

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