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斜陽の名門が奇跡の復活 入門時の体重が倍になると強くなる角界の法則【北の富士コラム】

2020年5月27日 21時24分

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若かったころの北の富士さん。体が細くて、なかなか出世できなかった=東京都墨田区で

若かったころの北の富士さん。体が細くて、なかなか出世できなかった=東京都墨田区で

  • 若かったころの北の富士さん。体が細くて、なかなか出世できなかった=東京都墨田区で
  • けい古はじめを見守る新出羽海親方(元幕内・出羽ノ花)=1960年12月23日
 いい天気ですねー。緊急事態宣言が解除となったのは何よりですが、まだまだ安心はできません。第2、第3の襲来を考えるとうんざりしますが、ここが我慢のしどころでしょう。プロ野球の開幕日も決まったようだし、少しずつ活気が戻り始めたのはいいことです。
 相撲界の方も四股、すり足、てっぽうの基本動作からぶつかり稽古を始めたようです。稽古もせずに飯ばっかり食べていると糖尿病になりますよ。それでなくても肥満力士が多いのに心配です。
 コラム4日目の私の若いころの写真を見ていただきましたか。幕下時代と思われます。まだ細く、おそらく体重は90キロくらいでしょう。私だけではなく幕下以下の力士で100キロを超える人はいなかったのではないでしょうか。よく言うではありませんか。「小さく産んで、大きく育てる」と。入門時の体重が倍になると強くなる。例えば私を例に挙げてみましょう。
 入門時70キロ。最高時で137キロ。大鵬さんは80キロくらいから全盛期は140キロから150キロ。柏戸さんも同じようなものです。玉の海関も70キロから140キロに。計らずともこのころの横綱は同じようなデータを示しています。大鵬さんは160キロぐらいまで大きくなりましたが、動きが悪くなり往年の強さはなくなってきている。柏戸さんも150キロをオーバーしたころから糖尿病になってしまいました。
 これは決して偶然ではないのです。私は何とか140キロまで体重を増やそうと頑張りましたが、どういう訳か太れませんでした。振り返ると135キロがベスト体重だったと思います。今は幕内の平均体重は160キロを超えているようです。明らかに大きくなり過ぎです。太り過ぎの原因は稽古不足、その一言に尽きると思います。「過ぎたるは及ばざる如し」。昔の人はいい事を言うもんだ。とここまで書いて気がつきました。今日はこんなことを書くつもりじゃなかったのに大失敗です。私の運命は激動の時代へと向かっていきます。続きを書くはずが大きく横道にそれてしまった。 気分を変え、枕話を少しばかりしてから本題に入ろうかと思ったのがまずかったようです。気を取り直して話を戻します。出羽海親方(元横綱常の花)が1960(昭和35)年の九州場所の千秋楽翌日、急死されました。前日の夜食べていたふぐにあたったという人もいましたが、それはないようです。私はずーっとお給仕していたので、それは信じられません。
 その晩は近くの温泉旅館に泊まりました。翌朝、ラジオの臨時放送で出羽海親方の訃報が発表されて大騒ぎとなりましたが、親方衆や関取衆も外泊し誰もいません。それでもニュースを聞いて1人、2人と帰って来ましたが、あまりの出来事に何にも手が打てない状態でした。ようやく全員がそろったのは昼も過ぎたころです。どの顔も青ざめて、中には泣いている人もいました。
 夕方になり親方、関取が一堂に集まり会議が始まりました。若い者は近づかないよう注意されました。後継者の話をしているんだと兄弟子たちが話しています。張り詰めたような緊張感が延々と続きます。すでに部屋の後継者は、前年に引退したばかりの九重親方(元横綱千代の山)と暗黙の内に決まっていたようですが、会議は予想外に長引きました。
 10時ごろようやく後継者は武蔵川親方(元幕内出羽ノ花)に決まりました。当然、千代の山関を推す声もありましたが、引退してまだ1年。年齢も34歳と若く、いろいろな経験を積んでからでも遅くない。ここは経験豊かな武蔵川親方にお願いということになったそうです。何よりも人望もあったからでしょう。こうして新しい師匠が決まったのです。
 といわれても武蔵川親方はめったに部屋に来ないので、われわれ若い者はあまりピンときていなかったのが本音です。正直言ってやはり千代の山関が良かったのにと思ったのは確かです。
 しかし、この新親方によって斜陽と言われた名門出羽海が奇跡の変貌を見せるのです。次回はいよいよ佳境を迎えることになります。何だか講釈師みたいですいません。調子に乗りすぎました。(元横綱)

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