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実況67年『ドジャースの声』ビン・スカリーさん死去 辛口の元担当記者が語るジェントルマンの素顔【竹下陽二コラム】

2022年8月6日 11時29分

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ビン・スカリーさん(AP)

ビン・スカリーさん(AP)

 ドジャース戦の実況を1950年から67年間続け、「ドジャースの声」と言われた名物アナのビン・スカリーさんが先日、亡くなった。94歳だった。私は、野茂が1995年にドジャース入りした時に同行した。入団会見の司会はスカリーだった。ただ、残念なことに直接取材する機会がなかった。そこで、当時のドジャース担当で辛口で鳴るラリー・ロッカ記者に連絡し、故人を偲んでもらった。
 スカリーさん亡くなったけど、思い出すことは?
 「1996年に野茂がコロラドでノーヒッターを達成した時のことを思い出すよ。スカリーは、ヤンキースのラーセンの1956年のワールドシリーズ完全試合を含む3つの完全試合と20のノーヒットノーランの実況をしてきたんだけど、あの野茂のノーヒッターが、最もリマーカブル(顕著、素晴らしい)な試合だったと言ってたよ」
 そうなんですか!
 「コロラドのクアーズフィールドは高地にあって、打者有利の球場と言われていたし、あのシーズンのロッキーズ打線はとりわけ超強力だったからね。おまけに、あの日の悪天候だよ。雨で試合開始が2時間遅れてね。マウンドは濡れて、ドロドロだった。その悪条件を克服しての快挙だったからね」
 なるほど…。ところで個人的なスカリーさんの思い出はある?
 「彼はね。とても、温かくて、どんな時でも、グレーシャス(優雅、優しい)な人だったよ。初めて会ったのに、もう、何十年も友人だったかのように感じさせるんだよ。ボクはドジャース担当は2年しかやってないけど、会って数週間で、古くからの友人のような錯覚すら覚えたもんだ。完ぺきなるジェントルマンだよ。身だしなみもしっかりしてるし、いつも、ほほ笑んでて、丁寧で礼儀正しかった」
 見たまんまなんですね。見かけと、実際は真逆な人も多いけど(笑)
 「いつも、フレンドリーだし、丁寧に接してくれた。不機嫌な時がないんだよ。あのぐらいの(地位も名誉もある)人だから、もっと、傲慢(ごうまん)になっていいのにね(笑)。いつも、グレーシャスなんだよ。丁寧と言えば、言葉のチョイスがパーフェクトなんだ。いつも、正しい言葉を使って、文法的間違いもなかった。なにか、台本でも読んでるんじゃないかと思うくらいに、パーフェクトだったな。偉大なる雄弁家。彼のことを球界のソクラテスと評する追悼記事があったけど、ボクの一番のお気に入りだ」
 ロールモデルという言葉があるけど、まさに、見本みたいな人だったんですね
 「みんなが、彼を愛した。彼の文学とアメリカの歴史の造詣は、野球の歴史並み、あるいは、それ以上に深いんだ。ひと言で言うなら、ジャイアント。巨人だな。数年前、ドジャースファンは、スカリーさんのことを“最も偉大なるドジャー”と投票したんだ。選手や監督を差し置いてだよ。いかに、彼が愛されてたか。最も偉大なるアメリカ人の一人だろうねえ。彼みたいな人は出ないと思うよ」
 辛口のロッカ記者らしからぬ絶賛のオンパレード。いかに、スカリーさんの人格者だったか分かる。当時、野茂取材で駆けずり回っている時は、ピアザやキャロスら主力選手にはよく話を聞きにいったが、スカリーさんに話を聞きに行く発想がなかったし、そんな余裕もなかった。スカリーさんの人間性をもっと身近で感じたかった。今さらながらに後悔の念がわいてきた。(写真はAP)
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