私たちは魚を食べ、釣りや海水浴を楽しみ、海から恵みを受けてきました。その海には、川から水が流れ込みます。川が美しくなければ、海も汚れてしまうのです。持続可能な開発目標(SDGs)を学べる自由研究の最終回は、身近な川を通じて海の環境を考えます。(山本克也)
深刻なプラごみ 川から海へ
皆さんの家の近くの川やその周辺に、ごみが捨てられているのを見たことがある人もいるでしょう。海岸や海に漂うごみの大半は、生活用水路や川を伝って入ってきます。
その中でも特に深刻なのは、ペットボトルや食べ物の袋といったプラスチックごみ。川の環境を守る市民団体でつくる「全国川ごみネットワーク」の調査では、全国の川沿いには二千万本以上のペットボトルがあると推測されています。
プラスチックごみは光や熱で劣化し、波の作用で砕けても自然には分解されず、数㍉よりも小さな「マイクロプラスチック」となって海を漂流し続けます。そうなれば回収は難しいです。マイクロプラスチックには生き物の害になる物質がつきやすいとも言われています。魚がえさと間違えて食べることで、さらにその魚を人が食べ、人体に害が出ることも心配されます。
日本の周囲の海ではマイクロプラスチックの数が一平方㌔当たり百七十二万個で、世界の海全体と比べると二十七倍です。
◇調べてみよう
川の観察は、必ず大人と一緒に。まずは安全に近づける場所があるか見極めましょう。流れが速いときや増水しているときは、川に近づいてはいけません。
場所が決まったら、海の環境に直接結びつくごみに注目してみます。特に、マイクロプラスチックのもととなるプラスチックごみが、どのくらい落ちているかを観察してみましょう。
できる範囲で、時間も区切って、川岸のペットボトルや食べ物の袋などをトングを使って拾い、それぞれポリ袋でいくつ分になったかを調べて記録します。紙くずやガラス瓶といった、プラスチック以外のごみの量もメモしておきます。
どのくらいごみが落ちているかは川によってさまざま。同じ川でも、山に近い上流の部分と住宅地を流れる部分、海に近い下流とでは様子が違います。場所や地形の特徴から、なぜそこにごみがあるのかも考えてみましょう。
◇考えてみよう
生態系にも影響
名古屋産業大大学院准教授 長谷川泰洋さん
ごみが落ちていない美しい川は、豊かな海を育むことにつながります。特に日本の周りの海は大きな潮の流れがぶつかるため、さまざまな魚がとれる良い漁場です。それなのに川からのごみが増えると、海の生態系にも影響が出かねません。自由研究で川や海への興味を広げ、観察を夏休みだけに終わらせることなく長く続けてみましょう。
当たり前のことかもしれませんが、自然豊かな場所に遊びに行った時は、必ずごみを持ち帰る。ごみが落ちていたからといってそのまま置いていかないようにしましょう。もし家の近くで、川や海岸の掃除などの活動があり、子どもも参加できるようだったら、ぜひ行ってみてはいかがでしょうか。
はせがわ・やすひろ 1980年、愛知県生まれ。名古屋産業大大学院環境マネジメント研究科准教授。主な研究分野は都市緑地や生物多様性の保全。里山などを守る活動に参加し、その効果の調査を続ける。