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【石川】心にトゲ 悲しく苦しく 性犯罪厳罰化5年 後絶たぬ事件

2022年7月7日 05時05分 (7月7日 09時51分更新)
事件の直後、被告から届いたメッセージ。被害女性は深い心の傷を本紙に打ち明けた=石川県内で(一部画像処理)

事件の直後、被告から届いたメッセージ。被害女性は深い心の傷を本紙に打ち明けた=石川県内で(一部画像処理)

白山の74歳男に有罪判決

 二〇一七年七月、性犯罪の厳罰化を柱とする改正刑法が施行された。強姦(ごうかん)罪を強制性交等罪とし、被害対象者の性別は問わないなど一九〇七(明治四十)年以来、百十年ぶりの抜本改正だった。あれから五年。処罰の範囲は広がったが、事件は後を絶たない。(前口憲幸、写真も)

癒えぬ傷 被害女性告白

 石川県白山市徳丸町で二〇二一年八月、自宅を訪ねてきた知人女性の体を無理やり触るなど性的な行為をしたとして、強制わいせつ罪に問われた被告の無職男(74)に対し、金沢地裁は五日、懲役一年六月、執行猶予三年(求刑懲役一年六月)の有罪判決を言い渡した。野村充裁判官は「被害者の精神的、肉体的な苦痛は大きい」と指摘した。
 人格や尊厳を傷つけ、深刻な精神的ダメージを与える性犯罪。判決後、被害女性が本紙の取材に応じ、ずっと胸の奥にしまっていた「あの日のこと」を打ち明けた。
 逃げても逃げても、追い掛けられる夢をみる。うなされ、思わず叫び、その声で目が覚める。被害女性が強いトラウマ(心的外傷)を告白した。「心に刺さったトゲが抜けない。この痛みはずっと消えん」。こみ上げる悲しさと悔しさ。今も、涙がほおを伝う。
 「性犯罪被害者の深い苦しみを知ってほしい。決して軽い話ではない。こんな事件がなくなるよう、願っている」。女性は少し目を伏せ、静かに口を開いた。
 一年前の夏。午前十時すぎ、暑い日だった。用事があって男の自宅を訪ねると「コーヒーでも飲んでけや」と言われた。「まあ、入れ」と執拗(しつよう)に誘われた。何度も断ったが、両腕をグッと引っ張られた。履いていたサンダルが脱げた。
 驚き、悲鳴をあげる。押さえつけられ、胸などを触られた。必死に抵抗し、足をばたつかせ、もがく。「どれくらい続いたのか、思い出せない。とにかく無我夢中で、何とか逃げ出した」
 その後も、吐き気を感じる苦痛が続いた。事件直後のやりとりが残るスマートフォンを見るたび、心が沈む。「自分が悪かったのか」「裏切られた」「忘れてしまおう」−。そんな思いが頭の中でぐるぐる回る。考え込み、フラッシュバックに苦しんだ。一カ月後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。
 示談交渉で、被害弁償が何度も提示されたが、断った。「お金で済ませるのは違う」と思ったからだ。せめて心からの反省と謝罪を求めた。裁判では被害者参加制度を使い、勇気を振り絞って意見陳述。「とても恐ろしい思いをした。この気持ちを分かってほしい」と訴えた。
 時間を重ねても、癒えぬ傷。判決を節目として受け止めることができず、新たな一歩が踏み出せない。「例えば新しい服とか、おいしいスイーツとかも楽しめなくなった。情緒が不安定で、本来の自分を取り戻せていない。もう誰も、同じ思いをしてほしくない」。女性はスマホを握った手を見つめながら言った。

▽14人に1人 被害経験
 1人で悩まないで相談専門ダイヤル

 内閣府が二〇二〇年度に実施した調査によると、女性の十四人に一人が無理やり性的な行為をされた経験があり、そのうち誰にも相談できなかったという人は約七割に上る。内閣府は「一人で悩まないで」との思いを込め、最寄りの支援センターに直接つながる全国共通の短縮番号「#8891(はやくワンストップ)」を導入、相談を受け付けている。
 このほか、各都道府県の相談専用ダイヤルがある。連絡先は、石川076(223)8955、富山076(471)7879。いずれも二十四時間三百六十五日、対応している。

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