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熱海土石流1年 光、いまだ見えず

2022年7月4日 05時05分 (7月4日 05時07分更新)
土石流災害から1年。発生時刻に黙とうする遺族や消防団員ら=3日午前10時28分、熱海市伊豆山で

土石流災害から1年。発生時刻に黙とうする遺族や消防団員ら=3日午前10時28分、熱海市伊豆山で

  • 土石流災害から1年。発生時刻に黙とうする遺族や消防団員ら=3日午前10時28分、熱海市伊豆山で
  • 土石流災害から1年。発生時刻に黙とうする遺族や消防団員ら=3日午前10時28分、熱海市伊豆山で
 土石流が発生した午前十時二十八分。雲間からわずかに青空がのぞく静まり返った山あいに、サイレンの音が鳴り響いた。熱海市伊豆山の土石流災害から一年を迎えた三日、被災現場の目の前では、集まった数十人の遺族らが両手を合わせた。サイレンが鳴り終わると、涙ぐみながら深々と一礼する人も。遺族らは地面に置かれた台の前に膝を突き、線香を供えた。 (佐野周平、足達優人、佐々木勇輝)
 玄関部分が崩れ落ち、木の板で補修された家屋や、崩れた石垣を覆うようにかぶせられたブルーシートなど、現場には今も災害の爪痕が残る。母チヨセさん=当時(82)=が土石流に巻き込まれて亡くなった鈴木仁史さん(57)は「復興は全く進んでいない」と厳しい口調で語った。
 ちょうど一年前。停電に異変を感じ、外の様子を見に家を出た間に、家にいたチヨセさんが土石流にのみ込まれた。今も、ふとした瞬間に亡き母を思い出す。最近やっと、母の思い出話を弟と笑って話せるようにもなったという。
 全壊した家は取り壊され、現在は弟と三島市内の仮住まいで生活している。弟は将来的に伊豆山に再び戻ることを希望するが、鈴木さんは「迷っている。そもそも、いつ戻れるようになるのか…」と漏らした。
 この一年間、被害者の会の会長として遺族らをまとめてきた瀬下雄史さん(54)。土石流で家ごと命を奪われた母陽子さん=当時(77)=の自宅跡で手を合わせ、サイレンが鳴りやんでも一分近く黙とうをやめなかった。
 「黙とう中は母の苦しみを想像していた」と瀬下さん。一年間がたつが「まだ気持ちの整理がついていない。実感もまだ湧かない」と複雑な思いを明かしつつ、「これからも闘いは続く」と、被害者の会として取り組む訴訟への覚悟を口にした。
 伊豆山港では、斉藤栄市長と川勝平太知事が被災現場に向かって黙とうした。斉藤市長は報道陣の取材に「多くの方の生命と財産を守れず、深く責任を感じている。市の責任は、今後の市の総括の中で示したい」と述べた。

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