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【リンパ浮腫を考える】(下)医療者たち 患者の苦しみ軽減へ続く挑戦 

2022年6月28日 05時05分 (6月28日 13時21分更新)
 
 がん治療の合併症として腕や脚などのむくみといった症状が続くリンパ浮腫。その治療効果は個人差がある上、診療報酬が低く抑えられていることもあって多くの医療機関は及び腰だ。そうした中、患者の生活の質を高めようと、積極的に治療に取り組む医療者たちを追った。 (編集委員・安藤明夫)

診療報酬の“壁” 


 日赤愛知医療センター名古屋第2病院がん診療推進センターの室田かおる看護師長が、医療リンパドレナージセラピストの民間資格を取ったのは2011年。リンパ浮腫は、がんの手術や化学療法を機にリンパ管の流れが悪くなるのが原因で起きる。ドレナージは、むくんだ部分を手でさすってたまった老廃物などを流すこと。浮腫に苦しみながら、がん治療を続ける患者が多いため「看護師ができるケアを身につけたい」と決意した。
 資格取得後間もなく、一人でリンパ浮腫外来を始めた。対象は、がん治療のため同病院に通院、入院中の患者で、1人平均1時間。症状が改善されて喜ぶ患者の姿に少しずつ協力の輪が広がり、資格を取る看護師も増えていった。

 しかし、ドレナージとスキンケア、運動療法などを組み合わせた「複合的治療」=表=が公的医療保険の適用になったのは16年度から。当初は再診料だけでドレナージを実施していた。3割負担の場合、患者の負担は210円で、とても採算が合わない。それでも継続できたのは「がん治療の合併症としてリンパ浮腫に取り組んでいこうと考えた経営陣の理解のおかげ」と室田さんは言う。
 現在は保険の対象になっているとはいうものの保険点数が低いため、同外来は相変わらず「不採算部門」だ。それは他の医療機関にとっても同じで、1回10分程度で終わらせる施設が大半。週5日態勢で丁寧なドレナージやセルフケアの指導をする同外来の人気は高く、受診者は年間延べ1200人。新規の受診は1カ月半待ちが続く。

効果には個人差


 がん治療が終わった患者には、自由診療のリンパ浮腫外来を紹介している。その一つが、同病院の乳腺外科にいた赤羽和久医師(51)が5年前に開業した赤羽乳腺クリニック(名古屋市千種区)だ。セラピストの中でも、上級の認定を受けている三階文代さん(60)らが、主に乳がん患者に週3回、ケアをしている。
 腕の場合、初めてなら約1時間で7700円、2回目以降は6600円。1万円を超える施設も少なくない中、自由診療としては価格を低めに設定した。赤羽院長は「行き場のない患者さんが多かった」と取り組みの理由を話す。
 リンパ浮腫の複合的治療の保険点数が低い理由として、赤羽院長は「確実な治療法が分かっていない点」を挙げる。「ドレナージで楽になった」といった感覚は患者の主観が大きく、例えば施術前と施術後の腕や脚の周囲径などは大きな差がないことも。流れが滞ったリンパ管と静脈をつないでバイパスをつくるリンパ管細静脈吻合術(ふんごうじゅつ)(LVA)を受ける患者も増えているが、効果は個人差がある。
 「リンパ浮腫は、がんの治療後すぐに現れることもあれば、数年たって発症する例もある」と三階さん。「皮膚の柔らかさ、しわの寄り具合、血管の見え方など皮膚の状態を日頃から確認して」と呼び掛ける。気になる症状があれば、治療を受けた病院に相談することが大切。赤羽院長は「そこに専門外来がなくても、情報を持っている医療者は必ずいる」と話す。
 

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