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施設理容師 今年も力に 85歳佐藤さん「役に立てるなら」

2022年6月24日 05時05分 (6月24日 10時11分更新)
施設入所者の髪にハサミを入れる佐藤常久さん(左)=七尾市富岡町のローレルハイツ恵寿で

施設入所者の髪にハサミを入れる佐藤常久さん(左)=七尾市富岡町のローレルハイツ恵寿で

七尾、2年目スタート

 七尾市富岡町の高齢者複合施設・ローレルハイツ恵寿(けいじゅ)に入居する理容師の佐藤常久さん(85)が、施設内で入居者の散髪を営業として始めて1年を迎えた。自身が高齢の佐藤さんは悩んだ末、「年齢もあり不安だが、役に立てるなら」と2年目続投を決意。保健所への更新手続きを終えた23日、さっそくハサミを手にした佐藤さんは「1年間何とか頑張ります」と語った。 (室木泰彦)
 佐藤さんは輪島市鳳至(ふげし)町で十九歳から理髪店「オリオン理容所」を営んだ。八年前に七十二歳で他界した妻千代乃さんと店を守り、患った大腸がんも克服したが高齢で体力低下。店を続けるのが難しく二〇一九年夏、六十四年続いた店を閉じた。同年秋に施設入所。半年後に喉頭がんが見つかったが、放射線治療で徐々に回復した。元気になるにつれ、生きがいだった理容店の仕事への未練の思いも感じるようになっていた。
 二〇年春からのコロナ禍で施設では外部から月二回来ていた出張理美容が休止。外出制限で思うように散髪できない入居者の状況を改善したいと、内田かおり施設長が佐藤さんに復帰を依頼した。ハサミを置き時間が経過していたこともあり不安だった佐藤さんは当初難色を示したが、繰り返し懇願する内田さんの熱意を受け入れ「みんな困っている。自分ができること、やってみようか」と八十四歳で再びハサミを持つことにした。
 法律で特別な場合を除き「理容師は理容所で理容を行わなくてはならない」と定められ、施設は施設内で理容業をするため保健所に申請し許可を得た。以来、体調を崩さないよう無理せず週三日程、一律千五百円で一日三、四人の散髪を引き受け一年。コロナ禍の収束が見通せないため施設側は今回、継続を依頼した。今も喉頭がん治療を続ける佐藤さんは「持病も心配だが、力になれるなら」と決意。二十三日から二年目の業務を始めた。
 三カ月ぶりに切ってもらった辻谷とみ子さん(83)はさっぱりした表情。同じフロアで暮らす佐藤さんとは普段から会話も交わす間柄で「長年気心も知れた人に切ってもらえるのは安心。何も説明しなくてもきれいに仕上げてくれる」と喜んだ。現役を退いた後も手放せなかった理容道具を施設に持ち込んでいた佐藤さん。「長年やってきたことが役立つなら。できる間は続けたい」と語った。

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